シーラカンス殺人事件    内田 康夫

徳間文庫

大東新聞一条秀夫は、同社が後援するシーラカンス学術調査隊に同行し、南アフリカのコモロ・イスラム共和国に派遣された。
ところがシーラカンスが捕獲されたニュースは、ライバル紙中央日報の紙面を飾った。
そして一条は行方不明となり、学術隊に参加した平野一雄は、三崎マリンランドの水槽で死体となって浮かんだ。
平野が特だねを中央日報に売ったため、争いとなり殺したのでは無いかと疑われる。
しかしシーラカンスのおひろめでやはり学術隊に参加した大谷カメラマンが死体となって発見されるに及び、事件は混迷を深め、警視庁の岡部警部の登場となる。
やがて、青木が原樹海での一条の死体発見。青酸入りの缶ジュースを飲んでの自殺とも考えられたが、口の中に妹の名を書いたカレンダーの切れ端、プルトップが見つからない等から他殺の線が出てくる。
事実は、借金に苦しんだ調査隊長の中西とマネージャーの桜井が、中央日報に記事を売って多額の金を得たが、一条が追求したため、これを薬殺、現場を見た平野を撲殺、しばらくして契約違反と二人の処分で強請りをかけてきた大谷を撲殺したものだった。
犯人が比較的容易に推定がついてしまうところが物足りないが、死体を氷ずけにして死亡時刻を狂わせる、テープにとった留守番電話に電話をかけさせ、あたかも生きているかのように見せるトリック、前述のカレンダーの切れ端、魚が釣れた日を12月31日から1月1日に見せるトリック、サルノコシカケに見えるシーラカンスの鱗の話など、興味ある話が多くトリック好みの作品と言えよう。

・作者があとがきを書いているがその中で以下に同感。
「トリックやサスペンスも必要ですが、それは作品を書く上での必要条件であって十分条件ではない・・・・「推理小説」の「小説」の部分を大事にしたい。」
・仮に低温冷蔵されたものであっても、解凍後間もなくなら変質の状態がはっきりしますが、一条のように2ヶ月以上も経過して、腐乱が進んだ場合には、組織そのものが破壊されてしまいますから、もう分析のしようがありませんよ。(268p)