そして誰かいなくなった     夏樹 静子

講談社文庫

 アガサクリステイの「そして誰もいなくなった」に似せて作った作品。
 桶谷遥は、父の関係する会社の口ききで、豪華クルーザー「インデイアナ号」に招待される。指定の逗子マリーナに行くと、招待客は5人、キャプテン竜崎、エンジニア東の7人で御前崎に向かうと言うことである。出港すると突然7人のどこからともなく、7人の罪状を告発するテープが流れてくる。気がつくとラックには7人の干支の置物が並んでいる。
 翌朝、プロゴルファーの奈良井が、自室ベッドで死んでいおり、奈良井の干支の置物が消えていた。奈良井の枕元には毒物(クラーレ)を打ったらしい注射器。ついで東が、脳挫傷で死んでいるのが発見され、また干支の置物が一つ・・・。 突然、船がエンジントラブルでストップしたかと思うと、コックピットで火災が発生し、無線が何者かによって切られ、コンパスにいたずらしたため、船が逆方向に走り、とトラブルが次々に発生する。しかも殺人は続き、テープで流れた罪状の詳細を告白した後に、新聞記者の冬川が、自室で絞殺され、弁護士の久世が、浴槽で水死体となって発見され、医師の鰍沢が、感電死した。
 遙は考える。犯人は私でないなら、生き残ったキャプテン竜崎、ついに二人は対決し、遥は竜崎を撃つ。そしてひとりになって気がつくと、首吊り用のロープが甲板にぶらさがっており、遙に自殺せよ、と告げているようだ。気が動転し、遥はついに海に飛び込んだ。
 実は桶谷遥の父桶谷正毅の会社のビルは、一昨年大火災をおこし、何十人もの人が死んだ。しかし補償交渉で父は、強欲を貫き通し、被害者に一片の同情も見せなかった。そしてその娘である自分もテープの言う通り、恋人を殺していた。

 少し経って、遥を除く死んだはずの6人は沖縄の丘の上のホテルで談笑をしている。
「ああでもしないと、桶谷正毅は反省しないからね。」
彼らは、あのビル火災の被害者たちで、遥に自分たちの恨みを晴らしたのだったのだ。おなじころ東京の病院で正毅が死に、日南の海岸に流れ着いた女性が桶谷遥と名乗った。

 読んでいる内に、湧き起こる「あいつが犯人かも知れない。」という疑心暗鬼と「次は私が殺されるかも知れない。」という恐怖が湧き起こってくる。そして最後の種あかしと読者を魅了する。クルーザーについてよく調べてある作品で、綿密な取材の重要性を認識させる。

・麻酔が掛かっている間は、ちょっと胸を圧すだけで、呼吸が停止する。(240p)

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