徳間文庫
昭和13年、日本は長引く日支事変に手を焼き、ソ連は満州進出を虎視眈々とうかがっていた。
この2年後にノモンハン事件が起き、3年後には太平洋戦争が勃発する。
そんなときソ連内務人民委員部の極東地区長官リュシコフが満州の国境を越えて日本に亡命してきた。
スターリンの不興を買い、身の危険を感じたからだ、ソ連内部には独裁者スターリンに対する怨些の声で満ちていると言う。
しかし、この報道は突然新聞紙上から姿を消した。
作者が追って行くとリュシコフは密かに軍の手引きで数人のロシア人と共に、日本を脱出。
ナポリを経てトルコに行き、そこから山岳地帯を経てソ連に侵入、スサの保養所にいるスターリンを襲おうと言う計画だった。
スターリンを憎むリュシコフ等とソ連に内部分裂を起こさせその力をそごうとする日本の思惑が一致したのである。
一行は2班に分かれて侵入後、合流する予定だったが先発隊3人が国境警備隊に見つかり射殺されてしまう。
数ヶ月後、残りのメンバーが再度侵入をはかるがやはり失敗、全員銃殺されてしまった。
レーオと呼ばれる密通者がいたからだった。
彼はソ連のスパイで最初からこの計画に参加していたのだ。
関係者が口を閉ざす中、「そもそもスターリン暗殺計画は存在したのか。」から始まって、つぎつぎわき起こる疑問をあくなき執念をもって調査して行く、・・・・それがこの作品の面白さであり、頭の下がるところである。
全編、妙な筋だてにせず、インタビューとか報道記事をつなげた形で構成されているところも新鮮である。
・(ウクライナ独立運動)ソ連が満州で抗日運動をあおるなら、日本はウクライナで独立運動をあおってやろう、と言うことだったのでしょう。(156p)
・・・・もし疑うなら、ウクライナからの食糧供給を絶たれたロシアでは、数百万人が餓死するはずである、という破壊工作科が計算した数字を添えてもよい。(160p)