天女の末裔           鳥井 加南子

講談社ハードカバー

昭和35年10月、岐阜県王御滝郡神守地区で村の男斉蔵が腹部を刺され、崖下に突き 落とされて死んだ。現場には、巫女を勤める若い女高森房枝がいたが「龍神様の御意思 です。」というばかりで、何も語らず、村人も「イチミコサマの呪い」と呟くだけだっ た。結局、房枝の犯行とされ、彼女は15年の刑を受ける。
しかし房枝は生まれたばかりの娘を中垣内純也に預け、彼女は中垣内の娘衣通絵として 育つ。23年後、自分の出生の秘密を探ろうと、衣通絵は恋人の石田と調査するうち、 事件の真相を暗示する中垣内の卒業論文につき当たる。
そして神守では斉蔵の息子新蔵が、王御滝山参りの行をするうち、谷に落ちて死んだ。 それを知った父は現場に行くが、宿で首つり自殺をした。
調査を続ける内、巫女だった房枝が調査に訪れた学生兼見に犯され、衣通絵を生んだが、 斉蔵にせめられ、これを兼見が殺したらしい。兼見は罪を房枝に着せ、娘を中垣内にま かせ、出世街道を進んだが、ここに来てその責任を問われ、新蔵を殺したらしい。
一方刑を終えた房枝は、高野美枝子と名を変え、有力者の庇護を受け、美容師として成 功していた。娘が中垣内に育てられていると知ると、今は大学教授となり、権勢を奮う 兼見をなじるが、会見場所で、偶然のガス爆発がおこる。衣通絵の母は房枝はこれで亡 くなってしまう。兼見は軽傷ですんだが、石田や衣通絵に攻められ、自殺する。
ヒロインの心理が細かく分析され、ヒロインに次々と疑問をいだかせ、その過程で読者 を引き込んで行く。行を行うときに1カ所、必ず水を飲むことがあり、それにあわせる ようにひょうたんに睡眠薬をまぜるトリックが謎解きのポイント。民俗信仰や巫女に話 しも面白く、興味深い作品になっている。
・エスキモーの神話・・・・海の幸を司る女神のところへシャーマンが訪れる。女神の 髪は乱れ、よごれて惨めな姿をしている。・・・・人間たちの罪の結果なんだ。シャー マンは彼女に近づき、肩で彼女を抱き止めて彼女の髪をとかしてやる。彼女には髪をく しけずる指がなかったんだ。そうやって女神の身なりを整えてやると、彼女は、海の幸 を与えてくれる・・・・。(94p)