講談社文庫
10年前に古蛾倫典は、薄幸の一人娘永遠の死を悼んで、鎌倉の森の暗がりに、108個
の時計で飾られた時計館を建てた。その時計館に幽霊が出るという。
謎を解こうと、W大学の推理研究会メンバー、雑誌「CHAOS」の編集長、霊媒師光明寺美琴等が旧館に泊まり込む事にする。時計台のある新館には建物の管理をしている紗世子、永遠を慕っていた由季弥少年等が住んでいた。
泊まり込みの初日、旧館から外に出る鍵を持っていた美琴が、血と壊れた時計を残し
て消えた。おかげで旧館の残りのメンバーは館内に閉じこめられてしまった。そして次々におこる殺人事件、いずれも時計によって殴打されたものだった。
10年前、おさな友達同士だった推理研のメンバーは、いたずらで森に落とし穴を掘った。それに永遠が落ちて死んだらしい。そして次々に開かされる旧館と新館、旧館の各部屋を結ぶ秘密の通路・・・事件は永遠を慕う由季弥の復讐劇か。由季弥が死に、事件は一件落着と思われたが、裏があった。
紗世子が、由季弥に見捨てられた薄幸の一人娘今日子の復讐を遂げたのだった。詩に予言された時を待って崩れ行く時計館、紗世子・・・・
。
時計館旧館の中と外で、時が全く違う歩みをしていたために、紗世子のアリバイがこと
ごとく成立していたという大トリックが目をひく。現実には起こり得ない世界なのだが、
推理小説としての醍醐味を存分に味わえる作品になっている。
他にも証拠隠滅のために時計を壊す、カメラマンを奪って時刻入りフィルムを処理する、
水道タンクに眠り薬を入れ、メンバーを朦朧状態にする、ガラスの間の砂が抜け落ちて
時計館がくずれるなどの興味深いテクニックが存分に披露されている。
・暗がりで手を結んで輪になりながら、右手だけは自由に使うパラデイノのトリック(
274P)
・何時の日か自分は姉の復讐のため、その4人を殺さねばならない。けれども、人殺し
はもっとも重大な犯罪だ。捕まれば死刑になる。どうしたらいいのか、と子供心に思い
悩んだ。そのうち、かれは「気の狂った人間が罪を犯しても罰せられない」という知識
を何処から得たか・・・・・(521P)
・108個の時計達は・・・・外よりも速いテンポで時を刻んでいた(556P)