積木の塔       鮎川 哲也

角川文庫

東京のある喫茶店で善良なサラリーマン和田塚が青酸カリで毒殺された。警察で一緒にいた女を追ったところ、長谷鶴子というバーの女だった事が分かる。所が、彼女もまた殺されてしまった。
鶴子は何人ものパトロンがいたが、中でも東洋冶金の資材部長をしている由比と親しかった。鶴子殺しについて、由比には完全に見える列車時刻アリバイがあった。
しかし、由比の証言にも関わらず、彼が和田塚をよく知っているという証拠を握ったとき、鬼貫はその犯行を確信する。
実は由比は高い地位に上り詰めたが、終戦直後、満州のチャムス工業大学をでたと学歴詐称をし、現在の会社に就職し、結婚をした。しかし夫婦に子供ができなかったため、鶴子に借り腹を依頼した。
しかし高校時代の親友和田塚に偶然会い、学歴詐称が鶴子に発覚した。鶴子はこれを種に妻の座を要求しはじめ、おせっかいにも和田塚を殺してしまった。会社における地位と家庭を守るために、由比は妻と謀って鶴子を殺さざるを得なかった。
鬼貫警部のしつこいまでの、一つの事象に対する検討がこの書では続き、次第に由比を追いつめてゆく。

作者は分からない、分からないと読者の疑問を引っ張り、ある時ポロっとしたきっかけで真実が一歩見えてくる。この手法を作者は縦横に使っている。そこがこの書の魅力である。特に一歩退いて考える、その面白さをこの小説では教えてくれるところがある。
一例を挙げると、海星はさくらよりずっと早く、博多を出発する。さくらが追いつくのは広島である。
しかし海星に乗った鶴子はずっと手前で、しかもさくらに乗って来た由比によって殺された。この謎は簡単である。鶴子が、ずっと手前の駅で乗り換えただけのことである。

なお最後の南俊子の解説もしゃれていると思う。

・嘘を言い抜ける。(138p)

・(青酸カリは)カメラ狂の暗室から盗んだ。(240p)