集英社文庫
湯川彩子は、戦争中ソウルに住んでいた。しかし、終戦後の混乱の時に、父を何者かに殺され、母も強盗に入った3人組日本人に犯され殺されたしまった。博多には7歳になる兄と一緒に引き上げてきたが、上陸してからはぐれてしまった。当時の様子を小説に書いたところ、大ヒットし、テレビで放映される。すると東山と名乗る男から「ソウルで私は隣家に住んでいたが殺人者を知っている、蟹満寺であおう。」との電話。出入りの新聞記者西郷と出かけると、東山が絞殺されていた。
放送を聞いて兄と称する男が二人も出現した。高校教師の浜田登と記憶喪失になっておりギターが趣味の草場ノボル。家族と二人の知らぬ軍人の映っている古い写真が出てきた。それから父がO型とわかり、彩子がA型なのでそこからどちらが兄か決めようとするがどちらの可能性もある。
雑誌に次の原稿を書くため、雪舟寺を訪れたところまたも五十五、六の男がジャックナイフで背中を突き刺されて死んでいた。背広からかって北山病院で運転手をしていた千田忠夫と判明した。彼は手にダイヤの指輪をし、昔のソウルの地図を持っていた。千田宅から東山から来た犯人を見たという手紙が見つかった。
そして彩子のもとに「ツギハリュウノテラ」とのとの手紙。そして予言通り大徳寺塔頭竜源院で、青酸カリ中毒により若い娘が死んだ。中山和美27才、北山病院院長担当の美容師だった。あの古い写真を元にテレビで呼びかけが行われ、一人は代議士の大林と判明、もう一人は大林によれば村園洋一だったが、後に山県警部の執拗な調査で北山病院に養子に入り院長となっていた!二人が強盗だったのか、もしそうとすれば3人目は?
彩子は養母のいる四国を訪れ、土蔵の中を覗くなどをしているうちに幼少時の兄の指紋を取ることに成功した。戻ると草場ノボルが行方不明、指紋を採らせなかった浜田登は雀で有名な更雀寺で両手首を切られた死体で見つかった。猫寺で両手首が見つかったが、拇の指紋は採取してきたものとは異なった。
彩子は西郷と共にソウルの昔の家を訪問した彩子は煙突の煉瓦の中から母の日記を発見、当時一家が大林、北山、姫田と親しかったと分かるが、姫田とは何者だろう。家を以前に浜田登らしい男が訪問しており、日記の最後の数ページが破られていた。彩子等をつけるようにして草場ノボルが現れ、指紋を残していったが、四国で見つけた指紋と一致、浜田にはないはずの永久歯があることが確認され、草場ノボルが実の兄と分かった。一方姫田は引き揚げ後、丹波でイノシシに突き殺された事が分かった。
鳥獣戯画で有名な高山寺で大林代議士が刺殺された。北山病院長が疑われるが、彼は井川婦長が手術室に電話をかけていたから病院にいたはずであった。さらにイノシシで有名な建仁寺で、北林病院長のアリバイを握る井川婦長が扼殺死体となって見つかった。
草場ノボルが博多で交通事故にあい、意識不明の重態、しかし覚醒したとき彼は失われた記憶を取り戻していた。父親殺しが大林、北山、姫田の3人であり、浜田とは親しかったと証言するが、病状が急変、亡くなってしまう。
電話のトリックが発覚、大林殺しのアリバイも無くなり、連日警察に調べられたからか、北山病院長が自宅で青酸カリ中毒で死体となって発見された。しかし手に「けふをかぎりのいのちともかな」の札。儀同三司の母の作品。あれこれ考えるうちに「これはお姫様の札よ。自分を殺したのは姫田、と言いたかったのよ、」ダイイング・メッセージだったのだ!
彩子の父母を襲ったに強盗3人組は仲間割れし、姫田が誘い出されて殺されていた。事件は姫田の息子(最後に自殺)の復讐談で、彼は驚くほど彩子の近くにいた!テレビのショウみたいに殺人が次から次へと続くからややこしい。最後に殺された理由も含めてまとめておこう。
蟹満寺 蟹塚で有名 東山 ソウルで彩子の隣家に住んでいた。
雪舟寺 亀で有名 千田 ソウルでの強盗事件を知って強請っていた。
竜源院 竜の絵で有名 美容師 強盗の一人大林の娘
更雀寺 雀で有名 浜田 にせの兄、犯人の正体を知って脅かしてきた。
高山寺 鳥獣戯画で有名 大林 強盗の一人
建仁寺 イノシシで有名 井川婦長 強盗の一人北林の腹心
それぞれの寺の由来に関する話がちりばめられ、一面では京都名所めぐりをしているような楽しさがある。実際にソウルを訪問する話も現実味が有り、興味がわいた。
電話のトリックは分からぬように短縮ダイヤルを押し、それから相手の電話番号を押すと短縮ダイヤルの方にかかる、というトリックである。しかし大林殺害は姫田の息子と言うことになるから、ストーリーとしては寄り道をしただけである。ほかに左手を基準とする指紋の話なども面白かった。作者の読者へのサービス精神たるや素晴らしいが、張り切りすぎて終始のつかなくなったものもあるようだ。寺にちなんだ殺し方は最初の二人で終わっているし、東山殺しの実行犯三人のうちだれかはっきりしない、また大林殺しは北山か姫田か、などである。(1977 43)
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