動く不動産
動く不動産 姉小路 祐
角川書店 ハードカバー
主人公は13年ぶりに東京から帰阪した元バレーボール選手現在フリーターの由佳とその義理の兄の浪速のデブチン司法書士伸太。
このコンビが悪くない。
義兄のお好み屋と兼用になる汚い司法書士事務所に美貌の岡崎美紀なる女性が訪ねてきて言うことに
「電信柱広告をみて2000万円の土地を、小端重夫なる男から買おうと、手付け金を払った。確かな物件かどうか調査して欲しい。」
登記簿を調べてみるとやはり直前に仮登記がされていた。
小端に二重売りを抗議すると「手付け金を倍返しするから・・・。」というが正義漢の伸太は許さない。
すると電話口から絶望の声が聞こえ、翌日排気ガスを引き込んで自動車の中で死んでいる小端が発見された。
しかも岡崎はいつの間にか消えていた。
伸太が小幡を調べると彼は名うての地上げ屋。岡崎美紀は小端に土地をとられて廃人同様になった男の娘で、本名は根坂嘉乃。
彼女が友人と組んで、地上げをしようとしている鶴見イザヤ園の土地を種に、小端を誘いだし、殺した者とわかった。
この書は作者が司法書士であるだけにそれに絡んだインチキの紹介が多く面白い。
たとえば
「他人になりすます。」
「所有者に気付かれずに土地の所有権移転登記をする。」
「即決和解で裁判所の介入を排除する。」
「仮登記により先に土地の権利を押さえる」
などである。
また自動車排気ガス自殺の密室トリックは、麻酔をかがせたうえ木箱に入れ、排気ガスを引き込むもので、指紋のついたガムテープの存在と共にかなりこっている。
一面でこの書は不動産取引の入門書としても面白いかも知れない。
・(大阪が勝てるのは、せこさとドヤ街だけだわ。)・・・大阪と東京の比較(25P)
・仮登記の申請というのは、小幡のもっている権利証はつけんもええんや。(73P)
・登記簿上の権利と実質的な権利は別とされる。・・・究極的には裁判を起こして本当の権利を証明する・・・(183P)
・権利証代用の保証書と住民票移転による印鑑証明書を使った移転登記(186P)
・即決和解(222P)
・裁判所に出頭した人間が”本人”であるかどうかの確認をすることは、現実にはなかなか難しいもんなんや。(225P)