文春文庫
南見市の新設市民福祉会館の柿落としに、高名な指揮者小倉をよび地元のM交響楽団がベートーベンの「運命」を演奏する。
ダ、ダ、ダ、ダン!その瞬間、指揮台が爆発し、指揮者の体が降っとび、オーケストラは阿鼻叫喚の場と化す。
演奏の音に共鳴し、仕掛けられたドイツ製の音叉が共鳴し振動、ひもで吊された小さなニトログリセリン入りのガラス瓶を揺り動かし、それが起爆剤となって大量のニトロ系の爆薬を爆発させたものだった。
捜査が進むうちに小倉の指導でバイオリンの演奏順位を下げられた高校の物理化学の先生坂本、大学教授への道を阻まれた又野と時山、時山の妻貞子、小倉の妻菊江などの名前が浮かぶ。結局犯人は坂本で、若い頃、バイオリンを教えていた貞子と深い関係になったが、貞子が次々と男を変え、最後は小倉の女になり、彼を馬鹿にしていたことを知り、二人に復讐をはかったものだった。事件は坂本が遺書を残して死に一件落着したかに見えたが実は、時山が共犯であった。
殺人の方法がユニークなのと、著者が学生オーケストラをやっていた関係上、西洋音楽がらみの会話や事のなりゆきがふんだんに出てくる点が優れている様に思う。