後ろ姿の聖像    笹沢 左保

講談社ハードカバー

「アリバイ崩し」 調布の駐車場で十津川映子という若い女性の絞殺死体が見つかった。荒巻部長刑事等は、8年前に作詞家の舟戸が殺された事件で、伊吹マリのマネージャ沖圭一郎が十津川に訴えられ、恨んでいたことを思い出した。沖が刑期を終えて出所したばかりであることから犯人と断定して追求した。
 しかし沖は今は結婚し、中沢代議士の妻となったマリにアリバイ工作を依頼するなどした末自殺してしまう。事件は一件落着かと思われたが、犯行当時北海道で昔の知人に会っていたことが分かる。
「再捜査」 なぜ沖はアリバイがあるのに、工作をしようとしたのか、北海道の知人の「結婚して北海道で静かに暮らしたい。」と言った意味は何か。沖は実はかってマリの姉、アキを愛していたが、交通事故で死んだため、マリとの結婚を考えていた。それが刑期中に中沢に嫁いだものだから、絶望して自殺したことが分かる。
「真犯人」 実は舟戸殺しはマリだったが、アキにマリの将来を頼まれた沖がかぶったのだった。一方、十津川は口止め料をもらってブラジルに渡ったが、失敗して日本にもどった。そしてマリの弱みをもとに、代議士として世間的に地位のある中沢夫妻を強請ったのだが、逆に殺されてしまったというもの。
 3段に分けて書かれている点、すっきりして非常にすばらしい。笹沢氏の作品にはそれぞれテーマの様なものがあると思う。この作品は女性の状況に応じた変わり安さと一本気な男の悲しさというところか。

・彼女の最大の欠点、それは何かにつけて金をほしがることでした。信頼できるのは金だけだ。・・・・・低級な人間の金銭哲学に忠実な女の典型だったんですよ。(131p)

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