角川文庫
選び抜かれた文体と表現が、独特の雰囲気を醸し出し、ぞくぞくするような怖いもの見たさで読者を刺激する。読後には暴力賛美でありとんでもない話、と感じさせながら、一方で妙に爽快な感じを与える。また銃など殺人装置、非情な殺人方法に対する描写も素晴らしく、暴力映画を見ているような感じを与える。
伊達邦彦は学生だが、警官殺し、ナイトクラブ経営者とその用心棒からの売上金奪取、現金輸送車強奪、用心棒の復讐戦と返り討ちと犯罪を重ね、最後には出身大学の入学金を奪取する。死体と共に燃え盛る校舎を後にし、相棒をも処分した邦彦は、ほとぼりをさますためハーヴァードに留学する。相棒の死体が発見されたころ、彼は広重がフランス後期印象派に与えた影響について、食堂で仲間と語り合っていた。
後半の復讐編はかって邦彦の父英彦が満州で成功しながら、現在の京急会長矢島祐介にだまされ、潰されたこと、妹の晶子がその息子雅之にだまされたことに対し、ハーヴァードから帰った邦彦が復讐を誓うことから始まる。
子会社の新東商事への入社、京急のメインバンクである三星銀行の監視、雅之への復讐をへて最後に三星銀行金庫を襲う。ピンチの三星銀行が京急に資金の返済をせまり、京急がピンチに陥る。邦彦はこれを利用し、京急株を買い占め、矢島祐介を追い落とすことに成功する。しかし警察と友人の正田の知る所となり、邦彦も最後の時を迎える。
最後の一言「自分は死ぬかも知れない。だが、たとえ身は土にかえっても、暗い野獣の悪霊は、人々の心の傷跡から消えることはない・・・。」が印象的。
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