角川文庫
吉田辰造は、金があるにも関わらず、家族、親類縁者につらくあたり、徹底的に嫌われていた。
労働組合のうるさい自分の会社、吉田鉄鋼を解散し、土地を売却しようとしており、役員、従業員からも敵と見なされていた。
そして自分自身は、周囲を警戒して神奈川県の山奥の桃谷村に要塞を築いて住んでいた。
私は彼の会社から委託を受けているしがない計理事務所の事務員。
私は会社の土地を売買に必要な書類に加え、いろいろな人の届け物を携えて、夜遅く彼の居宅を訪ねた。
ところがその夜彼は要塞の中で心臓発作で死んでしまった。
三重の厳重な扉、厚い鉄状網、逆木を配した堀、7メートルの高さにある一つだけある窓そんな大密室ののなかでの死。
当然それは自然死と考えられた。
通夜の終わった後、2号の女性が乗り込んできて、あらかじめ中で誰かが待ち伏せていて、殺した後綱を伝って窓から逃げたという主張した。
しかし窓が閉まっていた、綱はどうしたなどの答えがなかった上、自分自身の弱みもつかれて認められなかった。
事件はそのまま自然死として処理され、吉田鉄鋼は甥を社長に迎えて立ち直り、1年がすぎた。
そしてその甥と関係者の結婚式に私は呼ばれる。刑事のささやき声・・・・ 「あれは共同謀議による殺人だったのでしょう。
逆木の中の支柱伝いに窓の下に行き、梯子と肩車で中に入ったのはあなたでしょう。」
どこかのんびりした、ユーモアのある文章が特色である。
特に2号の女性の探偵ぶりの書きぶりは楽しめる。
密室トリックと木製梯子の処理(薪として処理)も面白い。
最後の逆転のおもしろさを考えると「大誘拐」以上と思わせる作品である。