雪密室   法月 綸太郎

講談社文庫

 父親法月警視と、作者で推理小説作家綸太郎が謎を解く、というスタイルはまさにクイーン流。ちなみに法月綸太郎というネーミングは、小栗虫太郎作品に出てくる法水麟太郎のもじりかもしれない。嵐や雪に閉じ込められた山荘での事件、というのも良くあるスタイル。全体はカーター・デイクスン「白い僧院の殺人」をヒントに書いた趣である。
 山荘滞在者をあげると
(客)法月貞雄警視、中山美和子(モデル)、武宮医師
真藤亮(鎌倉の陶芸家)、その娘真藤香織
(参加者)沢渡冬規(「月食荘」オーナーで引退している。真棹の前の夫)、
一緒に暮らしている峰裕子
沢渡恭平(沢渡氏実弟、エリート官僚)、篠塚真棹(誇り高い美女)、その夫の篠塚国夫

(第1部)法月警視は、篠塚真棹からの招待で、東京から200キロの井賀沼近くにある山荘「月蝕荘」のパーテイに出掛けた。雪が降り出したその晩、恭平に「離れでなれで電話の音がする。誰もでない。」と起こされる。一足先に離れに行っいた恭平から、鍵が無いと言われ、取ってきた鍵で、一緒に中に入ると真棹が首をつって絶命し、何時間か経っていた。

(第2部)地元警察は「自殺だ。」と主張するが、警視は「真棹はゆすりを趣味とし、自殺をするような女ではない。」と主張。事実真棹が法月自身や真藤を脅していたことが明らかになる。娘を恭平と結婚させようとする法月の遠縁の男から余計なことをする、と苦情の電話がかかる。中山美和子が姿を消し、武宮医師にもおかしな動きがある!謎は深まるばかり!殺される理由はなんとなく推定がつくが、離れの周囲は雪一色で恭平の足跡以外に無かった。「白い僧院の殺人」を思わせる犯罪だ。事件関係者の人間関係が次第に明らかになって行く。

(第3部)綸太郎が到着して、父と一緒に事件の解決にあたる。事件は、恭平を強請っていた真棹を、関係者が3人係りで殺し、アリバイを作ったもの。トリックのポイントは
1 雪の降る前  共犯者Aが真棹を殺し、恭平と共に強請に使われた書類を奪う。
2 雪の後 恭平と共犯者Aは外に出て部屋に鍵を掛ける。
3 共犯者Aは鍵を持ち、恭平の靴で後ろ向きに歩き、靴跡をつけながら母屋に戻り、靴を離れのそばにいる恭平に投げ返す。鍵を鍵入れにしまう。恭平は靴を履く。
4 母屋では共犯者Bが恭平を装って、法月警視に声をかけ、離れに先に行くという。
5 法月警視が行くと恭平が外に立っており、離れは密室、足跡は恭平だけになっている。

 引き裂かれたエピローグと称し、最初と最後に結婚式の場が書かれ、恭平をねらっていた女の殺害容疑で、早苗の父で法月警視の遠縁の男が逮捕されることになる書き方も面白い。
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