憎悪の化石         鮎川 哲也

双葉文庫

有楽劇場でく挙式予定の神崎エミ子が、突然飛び下り自殺をした。
熱海の旅館になにをすることもなく泊まっていた湯田真壁という男が何者かに刺し殺されて死ぬ。
湯田の持っていた遺留品から湯田が探偵とはいいながら強請をしていた、神崎はそれを苦にして自殺したらしいことが分かり、伊井刑事の執拗な追跡が始まる。

湯田の遺留品の血染めのバッチから分かった、鋸をつかっての演奏を楽しむTMSCの8人、自殺した神崎の婚約者、アベックの写真から割れた流行作家夫人楢原よしこ、情事の相手のボクサー、夫の疋田十郎の12人が容疑者。
軽井沢の別荘で女性編集員と心中未遂事件を起こした疋田が、湯田を殺そうとしたことは分かったが、実は熱海の旅館に押し入った時には、すでに殺されていたという。
結局時刻改正時に列車に乗っていたと称するTMSCの曽我が犯人。
彼はロシア帰りだったが戦時中に刑事に妻を取られ、そのうえ妻が自殺したとあってその刑事を殺害し、死体を橋桁の中に隠した。しかしそれを湯田に発見され、強請られていたものだった。
時刻改正時を利用したトリック、だまして女性編集員に睡眠薬をのませ起きた後、彼女と心中をはかり、にせのアリバイを作るトリックが面白い。

執拗な追跡は「実際の捜査はこのようだろうな。」と思わせるくらい、丁寧に書かれている。