仮面劇場   横溝 正史


角川文庫

仮面劇場
ガラス箱の中に治められ、今は鳴門の海の藻屑と消えるばかりだった少年が助け出された。少年の名は虹之助、盲にして聾唖であった。この虹之助を、由利先生が反対するにも関わらず、夫に先立たれた大道寺綾子が引き取った。
天神祭りのおり、綾子、彼女の恋人志賀恭三、その腹ちがいの姉で歌手の甲野由美等の乗る船で虹之助が暴れたあたりから、不気味な様相を呈してくる。由美の母甲野梨枝のストリキニーネによる毒殺、甲野家の食客鵜島五郎の死など。
偽眼の奥に隠された毒薬、盲聾ではあるが唖ではなかった男の演技、絵筆などに仕込まれた毒による遠隔殺人などが読みどころである。

猫と蝋人形
大川の河岸ふちにある洋館に流れ着いた短剣を胸に刺された大きな蝋人形と、マヨネーズ・ソースの空き瓶。洋館の持ち主は年老いた矢田貝博士と、彼に金で買われたという夫人の通子が住む。矢田貝博士は吝嗇な上、ひどい焼き餅焼き。
通子には昔緒方絃次郎なるいいなづけがいた。その緒方が一月ほど前外国から戻り、大川沿いの空き家を借りたらしい。それがどう事件につながるのか。

白蝋少年
深川の掘り割りに浮かんだ紅紐で腰をつないだ二つの死体。一見心中に見えたが男は16か17の美少年胸に一突き、しかも死後一週間、女の方は毒殺で死後まもない。そして死体がはなつヘリオトロープの強烈な臭い。
男は鮎三で鵜道俊作のもとに養子にやられ、邦彦、美枝子にいじめ抜かれた少年。女はその醜女家庭教師緒方とも子だった。そして事件の起こる少し前、緒方が来る以前に鮎三の家庭教師だった蕗屋弘介が鵜道家を訪れていた。
由利、三津木コンビが大川を上下しながら事件の解決にあたる。

020213