「環境問題のウソ」  池田清彦

ちくまライブラリー新書

(1947)と言う人で、専門は理論生物学、構造主義生物学。評論活動を行っており、著書も多い。
4つのウソとほんとを取り上げている。
1地球温暖化問題のウソとホント
この問題については5月19日の「地球温暖化で水浸しになるか」で取り上げた内容とほぼ一致している。

2ダイオキシン問題のウソとホント
所沢産のホウレンソウから高濃度のダイオキシンが検出された、などと大騒ぎの末、1999年にダイオキシン法が成立した。
pg(ピコグラム)などという単位に騙されるが、実は人間の身に危険が迫るほどのダイオキシンと言うのはとてつもなく大きい。ごみ焼却場がダイオキシンを発生させているというのも大きな間違い。焼却場の近くの野菜にダイオキシンが高い、ということは裏付けられない。ゴミの中の塩素の量が増えればダイオキシンが増えると言う仮説も間違い。この話は、ごみ処理機器メーカーの陰謀ではないか、と疑問をもつ。食品に含まれるダイオキシンは95%が農薬起原で、焼却起原のものはごくわずかである。

3外来種問題のウソとホント
いかがわしい法律である。外来種の影響は生態系の種類組成を変化させると言うことだが長い間それが繰り返されてきた結果今があるのではないのか。遺伝子汚染と言う論理はまさにナチズムだ。タイワンザルとニホンザルの交雑が進めばニホンザルと言う種類が一つなくなるからなどという。もともとは同じ種類ではないか。トキはさっさと中国のトキを輸入していればよかったのだ。人工的に交配させて外来種で増やしておけばよかった。アメリカザリガニやウシガエルが騒がれたが今では数は頭うち。アメリカシロヒトリも一時騒がれたがシジュウカラが幼虫を食い、一時のように繁殖しない。外来種もそのうちに日本の在来種並の生存状況に成るのだ。外来種の制限は生きた外来種を持ち込むのは禁止程度でよく、入ってきたものを除こうとするのはおかしい。

4自然保護のウソとホント
自然物に生存権などと、女性や奴隷に権利を与える延長上で考えるのは間違い。またそこイデオロギーを持ち込むのも困りものだ。牛や豚は殺してもかまわないがクジラを食ってはいけない、などというアホな論理になる。自然保護はしたほうが良いに決まっている。道路の建設位置を少し変えればよいのだから、高尾山の下を通る圏央道建設には反対である。ただ自然保護を願っているのは先進国の一部の人々だけだ。残りの人々はそれどころではない。しかし現在の技術レベルで世界中の人々をアメリカ並みに引き上げるには地球が後4ついると言う人もいる。所詮は増えすぎた人間が問題なのであって、そこで自然とどう調和させて行くかが問題なのだ。

この本は最後の問題に対して明快な結論を与えているとは言いがたい。また圏央道建設反対など矛盾があるようにも思う。しかし全体としては中々考えさせる書物である。
政策や報道は事実を担当者が自分のものに焼きなおして見つめ、考え、実施する。しかしその担当者の本来の能力がどのくらいなのかは分からぬケースが多い。ズブの素人かも知れぬ。プロではあるが何らかのイデオロギーを持っているかも知れぬ。そのフィルターを通したものを読者は知らされ、行政の場合には命令を受ける。
本質は何か、を知ろうと思えば、一人一人が情報と自分の知識や経験と照らし合わせ、自分なりの判断をする必要がある。一番いけないのは他人がこういうから、オカミの決定だからと信じ込み、それを自分の意見のように言うことだ。そういう無責任な意見がだんだん大きくなり、結局は取り返しの付かぬ決定をしてしまう。物を自分なりに考えてみることの重要さを改めて教えている本、と言う事が出来ようか。

2007年6月16日(土)晴れ