扶桑社
「新しい歴史教科書」と対になって売られていた。
ただこちらは「新しい歴史教科書」と違い、余り物議を醸すところは無いように思う。
少し目新しいと思う所を取り上げても以下位である。
・公民とは…(7p)
・ 民主主義といえども万能のものではない。…・民主主義がうまく機能するためには、それによって規定される「義務と権利」あるいは「責任と自由」を、人々がしっかりと身につけておく必要がある。(29p)
・ 民主主義をめぐるフランスとイギリス(フランス革命の評価)(32p)
・ 法を守り、自分の自由をある程度まで犠牲にしてもやむを得ないという心構えが人々に予め備わっていなければならない。誰も見ていなければ何をやっても良い、あるいは、捕まりさえしなければ法に触れてもかまわない、と多くの人が思うようになれば、社会は遅かれ早かれ混乱し、衰退するであろう。(34p)
・ 日本国憲法の成立過程(57P)
・ 日本国憲法は国民の義務として。子供に普通教育を受けさせる義務、勤労の義務、納税の義務の三つを定めている…・この三つの義務を果たしてさえいればよいというわけではない。(73p)
・ 国旗・国歌に対する国民の意識と態度(106p)
・ (日本は)国際連合への拠出金額が実質第一位になっている。にもかかわらず…・国連憲章の旧敵国条項の撤廃と、安全保障理事会の常任理事国になることを求めているが、認められていない。(112p)
・ 北朝鮮による日本人拉致問題(117p)
・ 家族の縮小(175p)
・ 地名を守る(191p)
・ 個人の自由な振る舞いは、その人の個性に基づくわけだが、人間の個性はその人の属する国の歴史と国柄の中で育ちものだからである。歴史をふまえた国柄は、個人の個性と社会秩序の両方にとって、もっとも基礎的なものであり…(209p)
・ 国権か民権かの二者択一も廃されることになる。(211p)
この教科書の特徴は最後に学習資料として日本国憲法をはじめ大日本帝国憲法、民法、教育基本法、地方自治法など学習に必要な法律の全文、あるいは抜粋で載っていることであろう。これによって読者は考えながら学習することができる。
ただ残念ながら読んでいてどうも面白くない。公民という科目のせいなのかも知れないが、多くの知識をならべた、ような感じがし、そこに論理性や物語性と言ったものが不足している気がするのである。
「CO2を排出しない原子力発電は、すでにエネルギー供給の35%を占めている。公害防止技術や省エネルギー技術、代替エネルギー開発もめざましいものがある。だが、それらの技術は環境問題を根本的に解決するものではないし、石炭・石油などの化石燃料からの脱却を可能にするものでもない。科学技術の発達の過程で有害な物質が生み出されてきたことを、考えればそれに過大な期待を寄せることはできない。産業文明の恩恵を受けながら、他方で自然環境の完全な保護を求めるのは不可能である。」(203P)
たとえばこの文章などよく考えて見ると支離滅裂に近い。そのまま読めば原子力発電でいいじゃないか、石炭・石油などの化石燃料から脱却可能じゃないか、とさえ読める。過大な期待を寄せることはできない、とは何に対してなのだ?最後の文はそれはそうかも知れないがそこに智恵を働かせる必要があるのでは、と思いたくなる。全体、議論の押しつけだけで、論理性が無く、考えさせる所もない、と言わざるを得ない。
010616