「中国人の愛国心」   王 敏

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この本が書かれたのが2005年9月、丁度中国で反日デモでゆれた後であった。そのせいかこの本はそのことに対する中国人としての釈明のようにも見えた。
著者は日本にあこがれながら反日デモを起こす中国の若者たちの気持ちを日本人が理解することは難しい、とした上で、中国人の心を読み解く5つのキーワードを揚げている。
「愛国」=中国人の、愛国心は儒教精神の中で中国人の心に根付いてきた。愛国心を持つということは国のためでもあり、自分のためでもある。学ぶ、の目的は、自分を愛し、国を愛し、国にとって役に立つ人間になることである。ゆえに教育そのものが愛国であり、自分が強くなる事、自強を目指している。南宋時代に金軍に対抗した岳飛、アヘン戦争の林則徐などが尊敬され、その中国魂が崇敬される。愛国の考えは日清戦争後の21か条要求の頃から強くなった。しかし愛国にはときには親日もあるべきだ。一部の行きすぎた愛国は問題で、今は愛国の意味をもう一度考え直すべき時期にあると思う。
「歴史」=中国人にとって歴史とは現在を生きるためのモデルであり、智慧であり、マニュアルなのだ。中国人のタテ関係重視に対し、日本人は国際的に見れば、とヨコ関係を重視した考えを示す。それがかみ合わず軋轢を生む。双方国民が相手の歴史を知らない点が問題で、さらにやっかいなのは民衆の歴史観の相違である。
「徳」=靖国神社参拝で問題となった戦争への反省は、殷、周の時代から言われてきた。それではその代わりに国家の根幹にすえるべきものは何か。それが徳であると考える。「貴方は徳がない」と言うのは、中国人に対する最大の侮辱である。中国人は自然を天意と考えている。その天子たる支配者に徳がなければ、天意によって民衆が天子を倒してもいい、とさえ考えている。そこから「愛国無罪」の考えが出、デモ行為が時に正当化される。靖国神社参拝反対に固執する理由は「戦争は日本の一部の軍国主義者の罪であって、日本国民は中国国民と同じ被害者である」との考えに基づく。
「中華」=中華という概念は民族と結びつけて考えられやすいが、「文化」「文明」と言う言葉との結びつきのほうが強い。清朝は異民族王朝であるが漢文化を良く理解したため受け入れられている。逆に武力による支配を目指した元王朝を認めたがらない。日本が恨まれるのは先の戦争が、文化への侵略と見られているためだ。文化を考えるときに中国人がまず思い起こすのは「孔子」「歴史」「万里の長城」「文字」である。しかし近代以降は外国文明とのせめぎあいが続いている。
「受容と抵抗」=中国は外国から入ってくるものに対し受容と抵抗を繰り返してきた。アヘン戦争や義和団の乱は抵抗、中体西用論や社会主義の受け入れ、白猫黒猫論などは受容の象徴である。日本にあこがれる中国が、あえてデモを起こすのはこの辺に理由がある。日本人は大騒ぎする必要はない。また最近では中国文化を逆に発信しようと言う動きも盛んである。
これが中国人の基本にある共通の考え方、と言えるかどうか、私にはよくわからない。しかし中国問題を考えるとき頭の片隅に入れて置くべき視点とは思った。

2007年6月1日(金)晴れ