PHP研究所
中嶋嶺雄は東京外国語大学学長などの要職を勤めるアジア問題専門家、古森義久は毎日新聞記者を経て産経新聞社記者を勤める。二人が国際社会における中国の動向、問題点、日本のとるべき道について交互に述べる、という形を取っている。散漫さはなく、わかりやすい解説書と言った感じがする。
その言わんとしているところをまとめると以下のようになろうか。
中国は毛沢東が建国を果たして、登小平が改革・解放を果たしたが、江沢民の時代になって、強力にはなったが、いろいろな矛盾を露出させているように見える。
党の教義としてはマルクス・レーニン主義を掲げながら、信じる者の少なくなった現実、改革・開放政策の一環で私有制を認め、市場経済に走ったこと、そう言った矛盾を論理的に整合させることが出来ない。しかし当局は天安門事件で強権で押さえつける味を知ってしまった。その結果時代の潮流に逆行する形で、共産党と軍が、民意を抑えようとしている。
ビジネスと言う観点からみるとパートナーとして問題がある、いわば中国社会そのものが高信頼社会でないということに尽きる。「孫子の兵法」でビジネスを考えるのか、計算高く最初は歓迎しておいてなれてくると追い出す、と言う方法を取る。ヤオハンなど良い例である。度重なる法規制の変更、乱収費の徴収、広東国際信託投資公司の崩壊における当局の対応などいづれも問題が多く、日本企業は泣かされている。中国ブームも最近ようやく覚めてきた。
中国はもともと一つの国ではあり得ない。チベットや内モンゴルは元々別の国だったのだ。同じことが台湾についても言える。香港について中国は一国二制度を取り入れることによって対応しようとしたが失敗した。台湾人はそれを知り、統一をいやがっている。軍事力で統一しようとすればアメリカが立ちはだかる。
対外的には多極的世界を目指す、というが明らかにめざわりな米国を意識し、多極になった暁にはその一つに中国自身が座ろうという意図が歴然としている。そのために軍事費は非常に大きな勢いで伸びている。そしてその力で南沙諸島問題などに対応しようとしている。
日本はODAと言う形で毎年援助を行っているが、それに対し、北京空港の例にみるように感謝の気持ちなどこれっぽっちも抱いていない、それどころか、その金が廻り廻って軍事費になっているとも考えられる。ODAは削減すべきである。
その一方で、日本は台湾との関係をもっと重要視すべきである。中国と協調し、しかも台湾を切り捨てない米国のやり方を日本は学ぶべきである。
・ 毛沢東が建国を果たして、登小平が改革・解放を始めたというのがこれまでの中国です。そこから前に江沢民主席が何をしたかというと、歴史的な業績としてはまだ何もしていません(古森12p)
・ 「共産党は中国社会の核心でなければならない」「台湾は必ず統一する」という二つの大きな国家的目標自体が、今日ではいづれもある種の空虚さを感じさせるのです(17p中嶋)
・中国というのは古来より皇帝型権力構造の国で、いわば近代的な意味での市民社会が欠如しています。(中嶋110p)
・ これは結局の所、中国が貿易なりビジネスのパートナーとして問題がある、いわば中国社会そのものが高信頼社会でないということに尽きると思います。(中嶋122p)
・ 日本に対して中国が考えていることは、基本的には、日本をある種の操作可能な対象国にしておきたい、ということでしょう。(中嶋154p)
・ それでも改革解放までは、対外的にも一つのイデオロギーがあって、それを外交に大言しようと言う意味では純粋な部分があったと言えます。所が今は、社会主義なのか資本主義なのか、共産主義なのか民主主義なのか、何が何だか分からない状態になっているようです。そんな中で確実に言えることは、中国がとにかく目先の利益を守ることと、遠い将来に覇権を目指すことだけは常に最重要指針とすると言う現実です。(古森179p)
・ わざと台湾の話題で中国を刺激してきた日本のマスコミ(古森210p)
011014