講談社文庫
久しぶりにかって高級コールガールキキと過ごした札幌のいるかホテルを尋ねるが、すでにそれはドルフィン・ホテルなる近代的ホテルに建てかわっていた。しかしそこで彼は僕は受付のユミヨシさんがエレベーターであるはずのない階に降り立ったことがある、といわれて愕然とする。このホテルには何かがある!
探求した結果私がたどり着いた暗い部屋にはあの羊男がいた。彼はあちらの世界に行かぬために「とにかく踊るんだよ。」と主張した。
札幌から東京に戻る際、僕は芸術家の母が突然カトマンズに行き、置いてきぼりにされた少女ユキを東京まで送った。父親牧村拓は母親アメとは離婚、金がすべての男だった。僕は次第に彼女の心を開放する。
札幌で見たひどい映画「片思い」の中で同窓生だった五反田君が演じていた。のみならず彼はキキトと濡れ場を演じていた。東京に戻ってキキの消息を求め、五反田君と連絡、意気投合するが彼の紹介で抱いた高級コールガールメイが後日ホテルで殺された。僕は突然警察に呼ばれこってり絞られる。しかし牧村拓の援助でなんとか救われる。拓には面倒をみてやるよう頼まれたりする。またユキの希望で母親をハワイにおって行き、リラックスした日々を送る。ユキは次第に正常に戻ってゆく。しかしアメを精神的に支えていた片腕の詩人が交通事故でなくなってまたおかしくなる。
僕はユミヨシさんがだんだん恋しくなり連絡を取り合ったりする。
ユキは五反田君の車に不快感を催し、次には五反田君自身を「あの人は人を殺した。雰囲気で分かる。」などと恐がる。やがて五反田君の自殺・・・・・。これらの事件はいったいどうつながって行くのだろうか。
日常の中でダンスステップをふみ続けながら、どんなことが起こっても不思議といえない世界を、とにかくすり抜けて行く・・・・そんな魂の遍歴を描いた作品といえようか。個々のエピソードに非常に聞かせるものがある。
・ いちばんの問題は僕が心の底から彼女を求めてはいなかったということだ。(上44p)
・ 「踊るんだよ。」羊男はいった。「音楽のなっている間はとにかく踊り続けるんだよ・・・・そして固まったものをすこしづつでもいいからほぐしていくんだよ。」(上164P)
・ 僕は何でもいいから彼女と話してみたかった。・・・「この近所のスイミングプールで女の子が二人鰐に食べられて死んだっていう話を聞いたんですがほんとうでしょうか。」(上185p)
・ そして夜中にふと目覚めてそう思うと、僕はたまらなく恐くなるんだ。僕という存在は一体どこにあるんだろう。(上265P)
・ 僕は時々思うのだけれど、美しく魅力的な中年の女性を見ることは人生における大きな喜びの一つだ。(下254p)
・ 猿を見ていると飽きない。おそらくその光景がある種の社会を連想させるからだろう。こそこそしているのがいる。お節介なのがいる。向こう気の強いのがいる。・・・・・(下261p)
030319