「不良中年」は楽しい     嵐山 光三郎


講談社

 五十歳をすぎたらみんな不良になろうじゃないか、と呼びかけるエッセイ集。老いては色欲に従え、バクチは人生の教科書である、小利口な若僧どもを蹴っ飛ばせ、放浪は男の特権である、マジメ人間よ、目覚めて不良になれ、われらオヤジ世代の「恋の方程式」、往生際は悪くてよろしい・・・・章タイトルから分かるようにどこを読んでも元気になること請け合い。言っていることは人生50も過ぎれば、会社人間みたいにこせこせせず、やりたいことをやれ、それが人生だ、と言うこと。私も大賛成!!!
 それにしても作者は有名人の往生際やら恋模様をよく調べたものですな。男なら北原白秋、壇一雄、嵐寛寿郎、柳家三亀松、松尾芭蕉、木食、若山牧水、渋沢栄一、西園寺公望、一休禅師、トルストイ、エジソン。松女なら貞奴、竹久夢二の恋人順子さん、松田聖子に大竹しのぶエトセトラ、エトセトラ。エジソンがモールス信号で恋をささやいた、なんて本当かしら。真偽のほどはともかく読んでいて楽しい。
 最後に不良中年の技術と称し、二十の箴言が書いてあるから参考になる。ただし、全部この通りやるのはやっぱりアホに違いないと思った。「なれぬことはするな、威張らない、自慢しない、分析しない、怒らない、短髪にする、上等の服を着ろ、時計は安物でいい、金離れをよくする、温泉、女を理解するな、泣くな、やせがまん、年増女がいい女である、口説きは迅速に、負けてこそギャンブル、宗教を信ずるな、自分の力を信ずる、孤立を恐れるな」

・「富貴は悪を隠し、貧は恥をあらわす」(西鶴)(73p)
・博打は1日分の収入以内で(80p)
・オヤジは、さまざまな制約にしばられている。きちんとした経済人であること。よき夫であること。妻にやさしく、妻を理解し、女性雇用を積極的に推進し、選挙は棄権せず、煙草は吸わず、会社に遅刻せず、税金はきちんと払い、セクハラをせず、上役には礼をつくし、部下を公平に扱い、決して威張らず、清潔な身なりをし、近所と仲良くつきあう。子をきびしく教育し、PTAには出席し、役員もたまにはひきうけ、塾代も払い、子に反抗されても我慢し、団地の草とりには欠席せず、駐車場割りあて抽選会では幹事をやる。会社にいけば業績をあげるために頭をしぼり、インターネツトをおぼえ、取引先にはペコペコし、取引銀行にはおどされ、毎日会社の食堂で四百五十円の定食を食べる。こんななかからゴーギャンは生まれるはずはない。
・思い置くまぐろの刺身ふぐと汁ふっくりぼぼにどぶろくの味(新門辰五郎)(183p)・睾丸に白髪が生え涙かな(中村勘三郎)(188p)
990720