ギリシャ神話   アポロドーロス

岩波文庫  高津春繁 訳

この本を求める気になったのは、聖書と並ぶ古典中の古典ギリシャ神話は、世界の思想、芸術、文芸に多大な影響をおよぼしたが、解説本が多く原典らしいものにお目にかかった事がない。これがその一つらしい、と買った。
ウエブで調べると、ギリシャ神話の原典といえるものは、ホメーロスの叙事詩「イーリアス」「オデユッセイア」、ヘシオドス「神統記」「農と暦(仕事の日々)」「ホメロス賛歌」、ピンダロスとバッキュリデスの叙情詩、ヘロドトスの歴史書、パウサニアスの「ギリシャ案内記」アポロドーロス「ギリシャ神話」などに書かれているもの」らしい。
なかなか分かりにくいから、後世解説本などがいろいろ出されている。岩波文庫のブルフィンチの「ギリシャ・ローマ神話」などはその代表作だろう。

ギリシャ人はインドアーリア人の一分派で、紀元前2000年頃からドナウ川地方から南下し、前1000-1200年頃ギリシャ本土、多島海諸島、小アジア沿岸、クレタなどに進出した。ミケーネ文明を築く内に、従来のゼウスなど北方のインド・ヨーロッパ的要素、「アポロン」、「ガイア」などの地中怪住民に関する要素、「大洪水神話」や「ウラノス、クロノス、ゼウス3代の神界覇権推移神話」などがミックスされ、紀元前800年頃には生成したようだ。

この書について前書きに詳しく述べられている。
詳細は本文によるが著者は紀元後1-2世紀頃の最盛期のローマ時代の人である。著書の目的は古代の文学者にとって必要不可欠なギリシャの神話や伝説をもっとも便利な形に要約した参考書を提供することにあったようだ。著作にあたり、ローマの神話・伝説を、故意というほど完全に無視し、紀元前5世紀以前の作家をのみ典拠としている。また目的に従い、ほとんど必要以上と考えられる位の人名が列挙されている。
また著作の写本はすべて第3巻のテーセウス伝説の中途で突然切れている。しかし欠如部分の断片が存在するらしく、訳者はこれらをアレンジして全体としてスジの通るようにした「摘要」をつけている。トロイ戦争以後はこちらに含まれている。

創世記を少しまとめて書くと
「天空(ウラノス)が全世界を支配し、大地(ゲー)を娶って妻とした。大地は次々と子を産むが天空は一部を地獄に幽閉したために、大地はクロノスに黄金の杖を与え、父の生殖器をきらせた。クロノスは支配権を得て、姉妹のレアーを妻とした。レアーは多くの子を産むが、大地と天空がクロノスに予言して、自分の子によって支配権を奪われるだろう、と予言したので、生まれた子たちを飲み込むことを常としていた。やがてレアーはゼウスを産むが、洞窟中でえいじを守りながら、石をむつきにくるんで生まれた子のように見せかけ、クロノスに呑み込ませた。成長したゼウスはクロノス等と10年にわたる戦闘を戦い、最後には幽閉されていた者共を味方として勝利した。彼等は支配権について籤をひき、ゼウスは天空を、ポセイドンは海を、プルートーンは冥府を支配することになった」

以下彼らの作る子達がいろいろな神々になるのだが省略する。第7章では人間誕生のくだりがある。
「プローメテウスが水と土から人間をかたどり、ゼウスに秘して大ういきょうの茎の中に火を隠して彼らに与えた。ゼウスがそれを知り、大部分の地を洪水で覆ったので、それまでの人間はすべて滅んでしまった。プローメテウスの子デウカリオーンとその妻ピュラー(パンドーラーの娘)は箱舟を作って9日9晩漂いパルナーソスに難を逃れた。そこでゼウスに言われたとおり、石を頭越しに投げるとデウカリオーンの投げた石は男に、ピュラーの投げた石は女になった。」

以下今度は人間の子孫の話に移る。ゼウスもなかなか絶倫で次々を姿かたちを変えて人間の女と交わる。こうして人類はますます栄える?読みにくいけれども、ギリシャ神話に少しでも迫ろうと思うならまず目を通しておく書物なのであろう。

060308