偽善エコロジー     武田邦彦

幻冬社

年賀はがきは古紙を配合した再生紙を使っているはずであった。年賀状はがきの下のほうにはっきりそう書いてあり、単純な私など100%古紙でできていると思っていた。ところが実際には古紙の配合率が極めて低いことが明らかになった。郵政省とメーカーの契約は、40%の古紙を混ぜることとなっていた。しかし技術的な問題が多く、実際には1-5%に過ぎないらしいことがわかってきた。
著者は、リサイクルするより、余っている国から輸入した方がいい、というのである。前者はインクを抜いたりするのに強力な薬品を使う必要がある上、製品も3回もリサイクルするとぼろぼろになってしまう。森林は維持するために生成する木の半分くらいを伐採する必要がある。世界にはそのような木材が余っている国があるから、チップに加工した上輸入すればいいではないか。森林を伐採、掠奪林業を行っているというのは作り話で、製紙会社は自分たちの原料であるから、非常に神経を使って森を守ることに努めている、と説く。
言われてみると、我々は山に行くと管理が行き届かず荒れた森をよく見かける。そして森を維持するには人手がかかる、ボランテイアでやってみたらなどと揶揄される。そういう樹木をなぜチップにしないのだろう。それにあんなに古紙回収の実績は色々報告されているのにどのくらい使われたか、つまり日本で生産する紙全体のどのくらいが古紙であるか、という統計は見たことがない。どの程度役に立っているのか?
このような環境問題を著者は次々に挙げ、それが本当に正しいものなのかどうか、著者なりの判定を下している。以下にその内容をあげるが、その内容はショッキング。
<エコな暮らしは本当にエコか>1、レジ袋を使わない・・・・・ただのエゴ 2、割り箸を使わずマイ箸を使う・・・・・ただのエゴ  3、ペットボトルより水道水を飲む・・・・・悩ましい  4、ハウス野菜、養殖魚を買わない・・・・・ただのエゴ 5、石油をやめバイオエタノールに・・・・・ただのエゴ 6、温暖化はCO2削減努力で防げる・・・・・防げない 7、冷房28℃の設定で温暖化防止・・・・・意味なし 8、温暖化で世界は水浸しになる・・・・・ならない
<こんな環境は危険?安全?>9、ダイオキシンは有害だ・・・・・危なくない 10、狂牛病は恐ろしい・・・・・危なくない 11、生ゴミを堆肥にする・・・・・危ない 12、プラステイックをリサイクル・・・・・危ない 13、洗剤より石鹸を使う・・・・・よくない 14、無毒・無菌が安全・・・・・危ない 
<このリサイクルは地球に優しい?>15、古紙のリサイクル・・・・・よくない 16、牛乳パックのリサイクル・・・・・意味なし 17、ペットボトルのリサイクル・・・・・よくない 18、アルミ缶のリサイクル・・・・・地球に優しい 19、空きビンのリサイクル・・・・・よくない 20、食品トレイのリサイクル・・・・・よくない 21、ゴミの分別・・・・・意味なし
5は、最近玉蜀黍をはじめ、各種の食料品原材料の価格高騰を招き、「大体食べるものを石油にする発想がおかしいのではないか。」との議論が出始めている。6や8は、この通信でも取り上げたとおりで、疑問の多い環境対策である。
9は最近余り言われなくなったように思う。焚き火でダイオキシン中毒にかかった人は聞かぬ、本当はどうなのだろう。11は、実際ビニールなど妙なものが混じっているから使わない、という農家が多い。12も少し考えてみれば非常に種類が多く、植木鉢にするくらいが関の山で、そう簡単にはリサイクルできまい、と考えられる。するとリサイクルできなかったプラステイックはやはり燃やしてしまうのではないか、著者ならずとも囁かれる疑問である。
リサイクルでは、15については冒頭に上げたとおり。17も業界のためにのみ我々は分別させられているように感じる。20は12と同じように考えるべきではないか。著者は、アルミリサイクルの利点を認め、分別はせいぜい金属とその他でいいとする。
実を言うと、その理由づけに100%私が首肯できるか、といえば疑問に感じるところもある。しかしリサイクル、リサイクルと錦の御旗のように叫び、それがどのような効果を持つのかクリアになっていないものが多い。さらに悪いことに、国は温暖化対策のように効果に目をつぶって闇雲に二酸化炭素削減などを推し進めようとしている。我々は今一度冷静になって環境問題とその対策の費用対効果について考え直すべき時期に来ていると考える。
その意味でこの書は一読の価値があるし、無視してほしくない一冊である。

20090220