半七捕物帳(2)       岡本 綺堂


光文社文庫

作者が半七に「江戸時代のシャーロックホームズ」であれと願っただけに、冒頭に奇怪な謎が提示され、それが論理的な推理手法で解決されている。「奇怪な謎」は今日では推理小説の原型になっているものが多い。解決方法は現在と違って拷問等があり、一方で指紋などの科学的捜査方法が発達していない状況であるから、聞き込み、直感による判断、見込み捜査が主体になっている点は否定できない。また、日本画のようなあっさりとしかしポイントをついた風俗描写とともに、捕物帖らしく怪異があつかわれ迷信深い江戸時代の世相が活写されている。巻末の森村誠一の解説を借りながら個々の作品について簡単に解説する。

鷹の行方・・・・紛失物の捜査
3人の若いお鷹匠が品川の女郎屋で遊んでいるうちに、鷹が逃げてしまった。鷹は雑司ヶ谷の鷹匠が捕まえ、売ろうとしていた。解決後の半七のいきなはからいがうれしい。
津の国屋・・・・怪談とプロジェクトチームによる計画犯罪
津の国屋に表れる幽霊と次々襲いかかる不幸。実はお家乗っ取りをはかったプロジェクトチームの犯罪
三河万歳・・・・偶然の事故による犯人が意図した通りの結果発生
発端は鎌倉河岸に二本の牙を持った赤子を抱えた男の死体。実は三河万歳の市丸太夫が間違って見世物用の猫を殺して富蔵、お津賀から賠償請求。二本牙の赤子を代償になどと考えるうちに事故で富蔵、お津賀が死んでしまった。
槍つき・・・・通り魔犯罪
甲州の猟師が江戸に出て、竹槍で動物みたいに人をつくことに快感を覚え・・・・。
お照の父・・・・河童
お照の父親が夜中に侵入してきた裸の男に喉を切られて死んだが、この男は見せ物の河童を演じる少年だった。父親は昔悪事を重ねたが、そのときに相棒を裏切った。相棒が息子と江戸に現れて無心、ところが子供の方は敵討ちのつもり。
向島の寮・・・偽装心中
番頭と出来てしまった商家の妻が、そそのかされて、手代と相続権のある娘が駆け落ちしたように見せかけて土蔵に幽閉。
蝶合戦・・・・被害者のすり替え、蝶
善昌尼の弁天堂で、若い男が賽銭泥棒の末、お供えの餅を食って死んだものだから、たたりと大騒ぎ。実は殺されたのは弟の与次郎、強請られていた善昌がだまして殺したもの。今度はその善昌の首無し死体が発見される。果たして殺されたのは誰・・・。
筆屋の娘・・・・probabilityの犯罪
筆屋は器量好しの娘姉妹が筆をなめて渡してくれるので大評判。姉に良縁の話がでたが、嫉妬した娘がその筆の一つに毒を込めた。ところが死んだのは妹・・・・。
鬼娘・・・・動物を凶器に利用(犬)
娘が次々食い殺される。浅草では鶏泥棒が頻発・・・現行犯が捕まったが犯罪は1件だけ。
吉原の堤下に住むたちのよくない獣物使いの女が怪しい。
小女郎狐
猪番の小屋で若い男5人が死亡、二人が重体。狐のたたりと騒がれたが、調べてみるといろりに松をくべ、いぶり殺したものがいる。実は姉が狐つきと言いふらされ、自殺したのを怒った妹の復讐談。
狐と僧
本山反対派の住職が賛成派に拉致されて・・・。後に残ったその坊さんの衣装をつけた狐の死骸。
女行者
金に困った女二人ずれの男が江戸に出て行者となり、祈祷をしてもうけようと計画。大成功したが商家の久次郎が祈祷する娘と良い仲に・・・。つれてきた男の嫉妬が燃える。
化銀杏・・・・複数の無関係な犯罪の交錯、銀杏の精
大金で買った絵を抱えて男が通りかかる。化銀杏の精に見せかけて人を投げ飛ばすのが趣味の寺男。投げ出されて気を失ったところに、金に困った男が通り、所持金と絵を失敬。