光文社文庫
川越次郎兵衛
江戸城内本丸表玄関前に男が現れ「今日中に天下を拙者に引き渡すべし。渡さざるのおいては・・・」と一喝。捕まえたがこの男は縄抜け、笠には川越次郎兵衛とあった。実はこれは偽物。本物の川越次郎兵衛は江戸に出る途中、お葉という女衒屋の女房と良い仲になった。その知り合いの金持ち息子連中が、粋がって件の事をした者に五十両やる、と言ったところ、太鼓持ちの三八が買って出た。そして犯行隠しに次郎兵衛の笠を持ち出す・・・・。
・当時の川越行き・・・・浅草花川戸から墨田川をさかのぼり川越新河岸(一昼夜たらず)
廻り燈籠
御用聞きの中には腕が未熟、信用が薄く、ろくな子分もいないという例もある。三河屋甚五郎がそれである時密告のおかげで凶状持ちの金蔵を捕らえた。ところが金蔵は牢の中で仲間を募って喧嘩を装い、脱獄した。復讐される、お前さんに何かあっちゃ困ると女房お仙のすすめで三河屋は逃げ回る・・・・。
夜叉神堂
渋谷長谷寺で清水観音のご開帳があったが、鉢もしころもすべて小銭や小判を使った兜が飾られ、たいそうな人気を呼んだ。ところが小判と二朱銀が無くなってしまった。後ろの夜叉神堂をはっていると、お面の箱にそっと近づく女・・・・。
地蔵は踊る
はやらない高源寺は縛られ地蔵をすえ、諸願成就の噂をたて大繁盛。それが廃れると今度は地蔵が動く、見ればはやりのコロリにかからないと噂を流す。しかし源右衛門が失踪、地蔵の側には縛られた女の死体。実は地蔵をばくちの穴熊と同じ要領で動かしていた源右衛門が事故死、寺の秘密を知って強請っていたお歌という女性を寺男が殺しただけの話。
・穴熊・・・・賭場で床下に潜り込んで、細い針を使い賽の目を調節する事。(128p)
薄雲の碁盤
薄雲の碁盤は柘榴伊勢屋の愛蔵品。そいつにお俊という女性の首をのせて小栗家の門前に飾った奴がいる。万力という相撲取りは伊勢屋が旦那だったが、ある時殿様から拝領した刀を旗本二人に取り上げられ、大弱り。その旗本の一人が小栗の次男の銀次郎、そのイロがお俊。
癪に障ってその首切って・・・・。
二人女房
この話は府中に赴いた半七等が、鳥が落とした海魚を争っている子供たちを見かけた所から始まる。女の子の父の友蔵は悪人で娘の国を女郎屋に売ったが、彼女が和泉屋の清七と出来た、その二人が店から持ち出した金を友蔵が巻き上げたため、二人は心中した、その幽霊がでるというのだ。さて闇祭りのおり、伊豆屋の女房お八重が姿を消した。和泉屋の女房お大が消えた。前者は落語家のしん吉との道行きだが、しん吉に金を巻き上げられて自殺する。
後者は手代の幾次郎にそそのかされて、道行きとなるが、金を巻き上げられた上、送られた先が友蔵のところ、そこで散々に慰み者にされてしまう。
さながら当世女房浮気事情といった趣で描かれている。
白蝶怪
正月十八日の夜、目白不動近くでお勝とお北が白い蝶が舞っているのを見かけた所からこの話は始まる。いくつかの愛憎劇の中で殺人が起こるのだが、中心は深川芸者だったお近。彼女は、身請けしてくれた隠居を殺して金を奪い、惚れた旗本佐藤孫四郎を追って長崎へ。しかし江戸に戻ると白魚河岸の幸之助と逢い引きするようになる。ところがこの幸之助がまた意志薄弱で、御賄組の黒沼の娘お勝の婿になるが、婿に入ると隣の家のお北とも関係を結ぶようになる。嫉妬に狂ったお近は、火の番の冬助に頼んでその娘お冬に闇夜に蝶飛ばさせたり、お北を誘拐して土蔵に閉じこめ、お勝はお勝で自殺したり・・・。白い蝶の仕掛けは極細の菅糸を使い、燐を塗った烏凧を飛ばしたものであった。