被害者の人権       児玉 昭平


小学館文庫

1993年1月13日、夜、著者に電話が入った。「有平くんがマットの中で逆さまに吊るされた状態で見つかりました。体育館です。」慌てて駆けつけ、著者は変わり果てた息子と対面することなった。その後の捜査で、七人の子に「何か一発芸をしろ。」と脅かされ、拒否したところ、殴る、蹴るの暴行を受け、ぐったりしたところをマットの中に突っ込まれ、窒息死したと分かった。
著者は、山形県新庄市で幼稚園を経営している。田舎の小さな閉鎖社会である。
七人とも十四歳以下、やがて家庭裁判所で審理が行われたらしいが、著者はつんぼさじきである。最初はその七人の名前すら分からなかったという。家裁からの説明も通り一遍の紙だけ。くるのは激しいマスコミの取材攻勢のみである。
七人は当初犯行を認めていたが、大人たちに入れ智恵されたのか、家裁では一転否認し始めた。夏に行われた判決で「少年A,B,C、Gは非行を犯したとする証拠がないから、保護処分に付することは出来ない。D,E、Fをそれぞれ初等少年院、教護院に送致される」ことになった。D,E,Fは決定を不服として抗告したが、11月仙台高裁は七人全員の犯行と認めた上でこれを棄却した。しかしA,B,C,G無罪の決定は現行法では覆せない。少年の弁護士たちは再抗告したが、最高裁は1994年3月これを棄却した。
著者は、その後十年かかることを覚悟の上、少年全員と管理監督を行う責任のあるはずの新庄市に対し、民事裁判を行い、現在係争中である。
著者は、裁判過程を通し、少年法に基づく現行システムがいかに一方的で被害者の立場を無視しているかを痛感した。そして以下の4点を最低でも改正するべきだとしている。さらにこれらを各国制度との比較で論じている。
(2) 合議性の導入=審判は単独裁判官でなく、複数で。
(3) 検察官の出席=現行では、出席できるのは少年の保護者と付添人(弁護士)のみ
(4) 検察官の抗告権=現行では、抗告権は付添人(弁護士)のみ
(5) 看護措置の延長=審判に必要があり、身柄拘束できるが、現行ではわずか4週間。
著者は同時に学校、家庭裁判所等の「臭いものからは逃げろ」的な対応を痛烈に批判している。現行の少年院や教護院についても、社会復帰のみに重点をおき、罪を悔悟反省させるという視点がまったく欠落している、と説く。
一人息子を殺された悲しみが伝わると同時に、それを乗り越えて現行少年法、関連するシステムの問題点をついている。あわせて日本の田舎社会のもつ陰湿さにまで追求しており、考えさせるところが多い。

少年法は長いこと議論を先送りにされてきた。人権擁護派のおかしな弁護士どもが、自分たちの都合で反対し、日弁連を動かしてきたからだ。しかし、最近森首相が実現に意欲を燃やしていると言う。是非そうしてもらいたい。
なお次のサイトが少年法改正について一般市民の声を取り上げている。
http://village.infoweb.ne.jp/~child/
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