羊をめぐる冒険     村上春樹

講談社文庫

この作者の作品を読むのはこれで4作目になるが、現実と夢をない交ぜに書くようなところがある上、物語の結論が必ずしもでておらず、なかなか難しい。ただ、作者の物語を作り聞かせる能力はたいしたものでいつも感心してしまう。

あなたのことを今でも好きよ、と言う言葉を残して妻は出て行った。その後、相棒と小さな広告会社をやったが、突然尋ねてきた男から自分の発行したPK誌の写真にうつっている星型の斑紋のある羊を探して欲しいと頼まれる。その頃僕は耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガールフレンドになった。彼女の耳は特殊な耳で何かを察知する能力に優れている。二人は同じ目的で北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、羊をめぐる冒険旅行に出かける。札幌のはずれにあるいるかホテルにたどりつき、探索行を開始するが、ようやく最後にホテルのじいさんが良く知っていることをしる。彼は戦争中に蒙古で「羊に入り込まれ」、精神異常者として日本に返され、以後羊の研究一筋に暮らした変人である。彼の教えであの羊がいるという奥地の牧場を尋ねる。そこはあの<鼠>も尋ねたところらしいのだ・・・・・。

・ 僕は29歳で、そしてあと6ヶ月で僕の20代は幕を閉じようとしていた。何もない、まるで何もない10年間だ。僕の手に入れたものはすべて無価値で、僕の成し遂げたものはすべて無意味だった。僕がそこから得たものは退屈さだけだった。・・・・結局のところすべて失われてしまった。・・・・少なくとも僕は生き残った。良いインデイアンが死んだインデイアンだけだったとしても、僕はやはり生き延びねばならなかった。(上137p)

・ つまりね、いのちを生み出すことが本当に正しいことなのかどうか、それがよくわからないってことさ。(上143p)

030329