ひ弱な男とフワフワした女の国日本 マークス寿子


草思社ハードカバー

 著者は長らくイギリスの大学で教鞭をとっていたが、日本の大学でも教えるようになった。何年ぶりかの日本は、英国と較べてすべてが浮ついており、中味が無く、ニセモノが横行し、モラルが低下し、着るものから食べるものまですべてにわたって長年培われてきた良さが失われてきているように感じられた。なぜこんなにおかしくなってしまったのか。本書は問題を具体的に指摘し、原因を求め、日本人全体に警告を与える書である。指摘が100%当たっているとも思わないし、多少英国賛美のきらいも感じられるが、切り口は鋭くはっとさせられる点が多い。
腐敗の風土はどこまでも
厚生省の汚職事件などから、腐敗は役人や政治家だけの問題ではない、私たちが日常お金第一主義で、汚職に寛容な態度を改めない限り、再生産されて行く、と指摘する。
中流意識とみせかけの豊かさ
全員中流意識の、日本人は本当に必要かという意識よりもブランド品のレッテルさえ張ってあれば安心。その結果が粗悪な質の悪いブランド品が出回るようになってしまった。
平等化社会と個性化社会
給食事件など妙な形で平等化社会が利用されている。一方で若者は個性を求めてチャパツやルーズソックスに走っているが、単に反抗のポーズを取っているだけでルールにも従っていないし、機能的でもない。
ホンモノ志向はほんものか
インスタントな伝統づくりに走り、イベント化した祭りなど願い下げだ。伝統を見直し、その屋台骨に当たる日常のしつけを考え直せ。
ホンモノとニセモノの錯覚
味音痴を産む冷凍食品が氾濫し、日常の遊びの中にもヤラセが横行し(潮干狩り、タマゴッチ)、ユーモアに反する覗き文化が蔓延している。こんあ現実とのかかわりのうすい社会の中で育った若者に未来はあるのだろうか。
モノもらいの日本
ものをもらうことに対して潔癖さが無くなってきている。一方でただであるべき公園や道路は有料だ。それらを無料にするための消費税アップには大反対の合唱がおこる。
退屈をおそれる日本人
結婚式、葬式、正月などがイベント化してしまっていて式を祝う、死んだ人を悲しむという本来の目的が忘れられている。食べ物についてもニセ科学が長寿を保証すると信じられたり、食事を素直に楽しむのでなく評論するための食事番組などが放映されている。
・結婚式やイベントがパフォーマンスの類となってしまったように、最近では、葬式や出産もパフォーマンスになっているようだ。(116p)
生きがい探しの世の中
ボランタリー活動は生き甲斐を見つける上で大切だと思うけれど、それにのめり込んで本来の目的を忘れている者がいる。
・自分の生活をすべて投げ出してボランタリー活動をするというのは、ボランタリー活動としては異常に思われる。(141p)
氾濫するへつらい文化
へつらい文化が横行し、調子よく人に子供に人に合わせればいいと思っている輩がいる。下手なものは下手、いけないことはいけないと正直に教えなければいけない。
・日本の女性は本当にキャリアを作りたいのか、それとも単にお金を稼ぎたいのか、何が目的なのか自分でも不明のままに、何となく流されて仕事に出ている人が多いのではないか。(151p)
限界に来たごまかし社会
外交でも不祥事でも誤ればいいと考えている輩がいる。またお金でやさしさを買うとか、お金さえ払えばみんな喜んで受け入れてくれるという考えはやめるべきだ。まず自分自身に立ち向かい、自分で責任をとるつもりで言動せよ。
甘えつづける日本女性
人任せの育児で母親は一体何をしているのか。煙草は吸う、飲む、うつ、買うは当たり前など、一体どうなっているんだ。イギリスに来る女性も浮ついた考え方の者が多い。
・(イギリスでは)自分の生き方として、夫や恋人がいなければ生きていけないと言う時代ではなくなった・・・(201p)
ますますひ弱になる日本人
やさしさだけで通用すると思っている幼稚な日本の若者たち、こんな事で金が無くなったらどうするのか。もっと真剣に生きよ。チャリテイ活動に見られるイギリスの子供たちの行動形態を少しは学んでみよ。
・若い人は近代史もろくに勉強していないし、自分をコスモポリタンだと考えているが、過去と未来のバランスの上で、現在の自分の行動を規定する目を持つことが少ない。(206p)
・やさしさだけで生きていられるのは、日本だけのことである。(209p)
・現代史というのは評価が別れることがあり、様々な見方が出来ることを教えて、自分の国の見方、余所の国の見方その他の意見をも広く教えて、そう言った異なる意見の中から、自分の国についての考え方を自分で生み出すような教育の方法をとるべきである(216p)
・親の手に負えない子供を、親の面子や社会的地位に関わるからと、海外へ送るのが子供にとっていいはずがない。(222p)