本格ミステリー宣言 島田 荘司


講談社文庫

推理小説界で社会派が台頭するのに伴い、「社会は推理小説を書こうとするなら、本格を思考する発想がなくてもよい」との考えが出てきている。しかしこれは魔番っている。推理小説は本格の発想という石垣があってこそ、さまざまなスタイルで覇を競うことができる。
社会派の松本清張氏や今最も売れている西村京太郎氏や赤川次郎氏も発想に何らかのトリックを持っているが、どうもうす味、小粒になりがちだ。
しかし乱歩氏の「二銭銅貨」、横溝氏の「本陣殺人事件」松本氏の「点と線」、高木氏の「刺青殺人事件」、鮎川氏の「黒いトランク」などミステリー史上に作品名を高めている作品はすぐれたアイデアを内包しているものだ。トリックはこれほどに重要なものなのだ。
今一度トリックにあらん限りのスポットをあてるべきではないのか。
以上のような主張の元に綾辻行人、歌野晶午、法月倫太郎等の新本格派作家にエールを贈っている。

本格ミステリー宣言 U 島田 荘司


講談社文庫

本格ミステリー宣言を発刊して十年近くが経過した。その後のいくつかの議論が行われたがそれに対する議論という形でかかれている。
本格推理小説を書くコードとしてノックスの十則ヴァン・ダインの二十則に模し、以下の七則をあげている。(・・・竹本健治の考えも参考になると思った。 )
1 事件の舞台は孤島なり、吹雪の山荘なり、悪天候によって当地へ至るルートが切断された「閉鎖空間」である。
2 事件は、施錠可能の西洋式ドアがついた各部屋をもつ、プライバシー重視型の人工構築物内、もしくはその周辺で起こる。
3 ここに、居住、もしくは招かれた方々は、小説の冒頭で、全員がきちんと読者に紹介される
4 いよいよ事件が起こるが、これは血塗られた惨劇で、しかも密室内であることが望ましい。5 ここへ探偵役が、外部から招かれて登場するが、彼は最初の段階から惨劇の館内にいることもある。
6 惨劇は複数起こる。しかし犯人は依然不明である。この段階で、探偵役の推理が、思い違いも含めてしきりに行われる。
7 探偵役により、最後の犯人が指摘されるが、これは読み進んできた読者にとって、必ず意外な人物でなくてはならない。
そして推理小説を幻想からリアリズムにいたる縦軸と、情動から論理にいたる横軸で分類し情動・幻想・・・・・幻想ホラー
情動・リアリズム・・・・・風俗社会派
論理・幻想・・・・・本格ミステリー
論理・リアリズム・・・・本格推理
に分類しコード型本格の位置を情動・リアリズムいづれにもよらず、論理重視として分類している。
もっとも作者は同時に「物語のはやい段階での謎と、後半でこれを支える(謎を解体するときの)精緻な論理」という二点のみにミステリーの作家は情熱をそそげ。」というゆるい規定も一方で提示してるから、本格物でなければいけないという狭隘な考え方ではないようだ。