「大いにウソをつくべし」「弱いものをいじめるべし」「痴漢を歓迎すべし」等々・・・世の良識家たちが目をむくような命題をならべたてた「不道徳のススメ」、井原西鶴の「本朝二十不孝」にならい、著者一流のウイットと逆説的レトリックを展開する。
昭和33年に「週間明星」に連載されたものを、42年に文庫化したものである。彼は1925年生まれだから、34歳のときの作品ということになる。
大衆週刊誌であるだけに、カミシモを脱いだ幾分ふざけながら書いているように見える。しかしそれだけに作者の才気が感じられる作品である。非常に多くの情報を待っていると感じさせると同時に例証がうまい。
「いわゆる「よろめき」について」女というものは、大げさな肉体関係にいたる浮気をしなくても結構楽しいものだ。
「フー・ノウズ」英語で一番好きな言葉は何かと聞かれたら、私は、それはフー・ノウズだと答えましょう。・・・・亭主が会社の宴会と偽って、タイピストと温泉マークにしけこみ、適当な時期に悠然と奥方のもとへご帰還となり「全く男の付き合いの煩わしさには閉口だよ。などとのたもう。此れがすなわち「フー・ノウズ」
「人をまたせるべし」(二日酔いで)恋愛なんか考えたくもない状態で、ただブラリと街に散歩にでたとします。そんなときは、えてして、素晴らしい女の子がひっかかる。・・・・この世で一等世俗的成功がおぼつかないのは、ジュリアンソレル型の男、美貌でしかも野心家というタイプでしょう。
「子持ちを隠すべし」女房も子どももいるのに、ムリヤリ独身を装っている男というものは何だかあさましくって、いやらしい。・・・・男はどこかに孤独な岩みたいなところを持っていなくてはならない。
「おわり悪ければすべて悪し」自殺するくらいなら、人を殺すか、人に殺された方がましというものです。
・・・・・こう書いた著者が昭和45年、あの壮絶な最後を遂げた。なかなか言行一致は難しいものと感じる。
051012