犬をつれて旅に出よう       織本篤資


中公文庫

この本を買ったのは、私自身がスペイン、ポルトガルに何回か行き、懐かしく思ったからである。世界放浪というのは誰でもあこがれるけれど、なかなかできないもの、それを奥さんと犬を連れて300日もやっちゃうなんて、素晴らしいことだ、一体どんな風にしたんだろう、とも考えた。
普通、こういうものを書くとつい時系列で書きたくなる。しかしそうすると当たり前になってしまう。そうかと言って自分の乏しい感動を補うために、後から旅行ガイドブックや百科事典をひっくり返して書き足しても味がない。著者はそこの所を考えたのか、時系列的な部分を残しながら、経験を再構築し、かなり自由に、感じたままに正直に書いている。これが著者の文力と、豊富な写真と、動物を愛する優しい心とあいまって、どこから読み出しても肩が凝らず楽しく読める仕掛けになっている。
放浪した時、著者は49歳、奥さんはおいくつか知らないが元気いっぱいの年齢である。犬はミニチュア・シュナイザー種の雌。小型犬だから取り扱いは比較的やさしい。名前はマグ・ウイスキー、奥さんが主張した名前がマグ、著者が好きなものの名前を付けたくてウイスキー、その結果という訳でかなりふざけている。もっともお二人はかって自宅のセキセイ・インコに一番欲しいものの名前をつけた、チョキンである、と言うのだから推してしるべし。
ウイスキーを連れて入国する苦労、出国する苦労、ケージが壊れて頑張った話、宿探しに苦労する話、梅干しを人に勧めた話、思いがけず豪邸に泊まれた話、ジプシー一家の話、シードラの奢り攻めにあった話、ハモン・セラーノなど食べ物の話、スロット・マシーンの話、闘牛見物の話、犬が馬の糞を食い病気になりあわてた話、どれも大した話ではないがそれなりに面白く、楽しい。読んでいるうちに、私は犬を連れて行く気は無いがこのあたりをまた旅してみたい気になった。
気楽に一読お勧め!
010628