イリアス  ホメーロス

岩波文庫

「イリアス」「オデユッセイア」の二つのホメロスの叙事詩は世界最古の物語といわれる。
この物語はすでにトロイエの王子パリスにより、ヘレネが奪われ、それが原因となってアカイアがトロイエを攻撃し、10年近くが経過したところから始まる。

アガメムノンがアキレウスの愛妾プリセイスを奪ったことから、両者は激しい舌戦を繰り広げ、怒ったアキレウスは戦線から離れ、母テテイスに名誉回復を訴える。テテイスはそれをゼウスに嘆願し承諾させる。しかし、ゼウスの妻ヘレがこれに怒り、彼女は何とかトロイエを滅ぼそうと画策する。
ゼウスは戦闘を再開させよいとするが、両者はメネラオスとパリスの戦いによって戦いの決着をつけようとする。パリスは敗れるが、トロイエはヘレネ返還等を拒否、再びトロイエ軍にはアレスが,アカイア勢にはアテネがついて激戦が展開される。
2日目に入り、トロイエ勢力が優勢となりアガメムノンは帰国を考え始める。トロイエ勢はアカイエ勢が海岸に築いた防壁に迫る勢い。ところが神々の世界で、ヘレがゼウスをだまして眠らせ、アカイア勢に活を入れたため、形勢は逆転。しかししばらくして目をさましたゼウスが怒り、再びトロイエ勢優勢ヘクトルを先頭に責め立て、船に火を放たんばかりになる。神々の夫婦喧嘩もなかなかに強烈である。

この苦戦をみてパトロニクスがアキレウスの出陣を説くが拒否。しかしアガメムノンが妥協したこともあってパトロニクスがアキレウスの武具をつけて参戦する。
最後に親友パトロクロスを打たれたアキレウスが戦線に復帰、アカイア軍を悩ましていたヘクトルと一騎打ちし、これを下す。パトロクロスの葬送が盛大に行われる一方、ヘクトルの遺体はアキレウスによって陵辱される。その様子を見ていたトロイエのプリアモス王は単身アキレウスの陣屋を訪れヘクトルの遺体を引き取ることに成功する。

第一歌から第24歌までの物語はここで一応終っている。木馬の話とそれによってトロイエが滅びる話はオデユッセイアの第8歌に「あの頃の話」として語られるなどしている。アキレウスの死についても予言されているがでてこない。

訳者の上巻末にある解説によれば、この物語は前750頃語り物として成立したらしい。伝ヘロドトス作の「ホメロス伝」が上巻の巻末に記されている。それによると、彼が現場体験者の話などを元に詩文につくりあげた事が始まりらしい。
その結果であろうか、我々から見るとずいぶんと大仰な表現も多い。しかし日本の「平家物語」を念頭に考えればうなづけるのかもしれない。
「アガメムノンは涙を流しつつ立ち上がったが、その様はさながら、水黒くよどむ泉が、切り立つ岩を伝って黒ずんだ水をしたたらすよう・・・・・」(第9歌9-28)
「・・・・胸の辺りに槍を打ち込み、相手は地響きを立てて倒れて、その身につけた武具がカラカラとなった。」(第13歌169-205)
ギリシャ語のアルファベットが創られ、その使用が次第に広まるのは前800年前後からであろう、と考えられる。前8世紀の半ば頃には、相当量のパピロスの入手も、シリアやフェニキア経由で可能であったらしい。これらがベースとなり「前6世紀後半のアテナイで、ホメロスの詩についてなんらかの校訂あるいは編纂に類する作業が行われ、大祭の上演用にテクストが作られたことを意味することは確かだろう。」と訳者はしている。

060307