カエル・・・水辺の隣人  松井 正文

中公新書

のっけからクイズ。次のうち、両生類に丸をつけよ。

カメ、イモリ、トカゲ,ヘビ、ワニ、カエル

答えはイモリとカエルで他は爬虫類である。

爬虫類の胚(卵)は羊膜という袋につつまれ、羊水という水環境に恵まれているのに対し、両生類は卵がむき出しの状態で生み出される。「だから両生類は、魚類と変わらず水中で産卵せねばならず、まれに陸上で産卵できても、それは湿った場所に限られている。・・・(両生類は)水中と陸上の両方で生活できるような気の利いた動物ではなく、原則としてこれら両方の環境がなければ生活できない、情けない動物なのである。」(3p)

この情けない動物、両生類カエルについて総合的に書いてある「カエル・・・水辺の隣人」を読む。

子どものころよくおたまじゃくしを捕まえてきた。歌の通り、やがて手が出て、足が出て、朝になるどこに飛び出してゆくのかいなくなっていた。

少し前まで、雨上がりの道をあるいているとよくガマ(ヒキガエル)を見つけた。

手の上に乗せる。気味悪がる人もいるが、私はなんとも言えぬ感触が好きだ。時に小便をたれる時もあるが、ガマは概しておとなしい。私はそっと木の根元か何かに返してやる。

このガマは、またガマの油で有名。敵に襲われるなどして出す毒液だが、少量なら薬になり、強心剤など心臓病の治療に用いられる。

毒液はもっと強力な奴もいる。中南米に住むヤドクガエルは、よく似たフキヤガエルと共に世界最強の毒を持つカエル。彼らの皮膚にあるステロイド性アルカリ物質は、これまで知られている生物毒素の中でもっとも毒性が強い。その毒は、鳥や獣を狩るための吹き矢に使われる。(130p)

カエルは24科339属4382種に分類されるという。

それだけいるからずい分変わった奴もいる。乾燥に対して、ある種のカエルは皮膚からローソクを溶かしたような液体をだして体を覆ってしまうし、別の種類のものは水を飲むし、土の中にもぐって土から水分を取る者もいる。徹底すると、水中から出ないものもいる。

繁殖方法もいろいろだ。あるカエルは背中に卵をしょっている。どうやって背中に乗せるかが難しいところ。別のカエルは産んだ卵を飲み込んでしまい、胃の中で育てる。成長して口からおたまじゃくしを出すまで雌カエルは一切飲み食いができない。カンガルーみたいに鳴嚢という袋の中にいれて育てる者もいる。

おたまじゃくしに何を食わせるか、というのも問題。生まれてきた卵の黄味を食って育つ者もいるし、母親が無精卵を産み、それを食って成長する例もある。

著者の本来の研究テーマである分類学に関する話はともかく、三章「世界の変わったカエルたち」は読んでいてなかなかなかなか楽しい。

また四章は「消えてゆくカエル」と題し、現状とカエルを消してしまわない環境の保護を訴えている。確かに最近はガマもオタマジャクシもほとんど見かけなくなった。考えてみればコンクリートジャングルと雨水さえ一滴残らず飲み込む下水道、こんな環境ではカエルは消えてゆく以外ないのかもしれない。著者は言う。

「カエルは生物的な総合環境の良否を判定し、その推移を監視していくための絶好のバロメーターであることを見逃してはならない。カエルの繁栄状態は、それを含む生物環境の状態をきわめて忠実に反映しているのだ。これまで紹介してきたようなカエルの減少や絶滅は、結局は、他の生物にも番がまわってくることを警告しているのである。」