光文社時代小説文庫
なめくじ長屋シリーズの六番目の作品。全体アイデアがめだち、最初に江戸の風俗と共に、あっと言わせるところに重点が置かれているように思えた。
酒中花・・・・水の中に花のように浮かぶ女の首
丸屋の時太郎と結婚する予定だった信濃屋のお絹が拐かされたらしく、脅迫状。しかい彼女の首は酒中花よろしく天水桶の中で発見され、下は浜辺にあった。やはりお絹が、手代の清吉と道行を試みたか。しかしセンセーは「お絹は時太郎と一度は結婚を決めながら、親に財産がないからやめろと強要され、自殺した。親は世間にも丸屋にも格好がつかぬから、主人が殺された様に見せ掛けた。」と読む。
ぎやまん灯籠・・・ギヤマンの下からの光が作る幽霊
長崎屋で、連日先代の主人などの幽霊騒ぎ。そして今の亭主の奥方で、かっては先代の若い別嬪の嫁さんだったお三輪さんが夜中に突然死。しかしセンセーは先代を殺し、別嬪を手に入れたは良いが、自分の犯行を気づかれてしまった主人が、ぎやまん灯籠に映った影で幽霊騒ぎを起こし、お三輪を殺したと謎解きして見せる。
秘剣かいやぐら・・・一念一ふり、再手をばっさり。
切りたい相手を念じて、一ふりすると相手はどこか遠くで真っ二つ。それを実践して見せたお侍がいた。そんなことがあるわけがない。相棒が相手を切ってつじつまを合わせただけ。
かいやぐらは蜃気楼ののこと。
深川あぶら堀・・・・切られたふりして
秘剣かいやぐらと似ている。切られたふりをして川に飛び込んでくれれば、金をやると頼まれたマメゾー。とことが同じ時期に美濃屋の番頭がばっさりやられた。実はある旗本の次男坊が辻きりが趣味。これを隠すために一芝居。
地獄はやし・・・野郎の死体が娘の死体に
神田明神の大祭に大工の鉄が殺されていた。駆けつけてみると、それが評判の美人のお美代の死体にすり替えられていた。実は鉄次には双子の兄弟の金太がいた。悪党一味は金太に手引きをしてもらうつもりだったが、鉄次が争ううちに金太を殺して、しかもその死体を見つけられてしまった。こうなったら鉄次に金太役をやってもらう以外になく、それなら死んだ事になっては困ると、あわてて見つけたお美代をおいたものだった。
ねぼけ先生・・・宝の在処を示す漢詩を解く
八辻が原に女砂絵描き。男絵と女絵のすりかえなど見事なもの。ところが女は「実は悪党一味に脅されていて、先代が残した漢詩の暗号を解かねば殺されてしまう、助けてくれ。」と言う。センセー散々考えた様子で、悪党にこれは太田南甫の墓の近くに宝が埋められていることを示しているに違いない、と説明。皆で出かけて行くとセンセー、「先代は娘に宝の在処を直接教えたのさ、その漢詩はめくらましさ。」「なにを!」と怒ったがもう遅い。闇の中で皆を捕り方が取り巻いていた。
あばれ纏・・・燃えさかる火事の中、娘は龍神にまもられて
美倉屋で火災。ところが焼け跡には丸裸の娘のお滝が湯気をたてて横たわっていた。ほとんど怪我はない。夢に出てきた竜神様のお告げで守られていたという。そして近くから自害をしたように見える婚約者の油屋の栄二郎。そんな馬鹿なことはない、とセンセー等が調べると、お滝は火消しの新助と出来合っていた。