怪奇推理ミステリー事件ファイル     矢島 誠 他


永岡書店

このような作品集の場合、謎の部分だけを取り出し、読者に犯人は誰などと問い掛けているものが多い。これは長めにして、なんとか物語性を持たそうとしている。ただ、新人のせいかトリックも作品の書き方も玉石混淆という感じだった。私自身の学習も兼ねて少し詳しく内容を記述する。
嵐の夜の宴
警視庁警察官瀬戸際渡は山奥のホテルの結婚式に招待される。その日は嵐で、夜、招待客の一人橋詰紀夫が自室で刺し殺される。現場にはトランプが散らばり、彼はダイヤのエースを持っていた。ダイイング・メッセージと考えて瀬戸際は、トランプにちなみ上から読んでも下から読んでも同じ名前の志賀孝史を逮捕しようとしたが…。物語は結構うまいが、ダイイングメッセージだけに結び付ける警察官の態度は問題!
シャネルの香りの脅迫者
半年前、私は交通事故によって目とお腹の中の子供を失ってしまった。ペンションの創立記念にはオーナーの江口夫妻、私と夫の広岡正夫、鮫島夫妻、近藤圭一、菊池美奈代、橘法子が集まった。私のもとに江口夫妻の娘恵がしばしば現れ、ささやき掛ける。ほのかなシャネルの香水の香り。同時に「オマエヲコロシテヤル」の低くくぐもった声が聞こえてくる。そんなおり菊池が殺された。そして恵は2週間前に実は死んだという。誰が菊池を殺し、罪を私に着せようとしたのか。面白いがこの話は恵の幽霊は誰が演じたのか、犯人の確たる証拠などに明快さがないように思った。
情事の行方
さえない刑事で既婚者の小島高雄は、春野香織の依頼で香織につきまとうストーカーの捜査を始めた。ところが当のストーカーは心をもう他の女に移していた。そして小島はいつか春野と深い関係になっていた。春野は小島の結婚指輪を隠し、結婚をせまってきた。ついに殺してしまった。しかし隠された指輪が捜査で発見されてしまった。隠し場所発見ストーリーとしてはまずまず、さえない刑事小島の描き方がうまい。
冥界からのメッセージ
いびきの大きい再婚の夫剛蔵に殺される、と恐れた芙美枝は先にやることにした。「就寝時無呼吸症候群」とおどかし、コーヒーを飲ませたところ死んでしまった、という。毒物は一切検出されず死亡原因は心臓発作と言うことになった。ただコーヒーを飲ませる前に砂糖の袋をしめして「これ、病院から拝借したの。貴樹(先夫)さんも睡眠薬じゃなくて、こっちの薬を使っていれば確実に死ぬことが出来たのに…。」と、剛蔵に言ったことだけは誰にも内緒だった。そんなにうまく行くかなあ。
丑の刻参りのアリバイ
私は丑の刻参りをしているように見せて、恋敵を殺した。しかし警察はアリバイ作りのために1本余計に打ち込んでおいた五寸釘を見逃さなかった。時そばみたいなアリバイ作りは今一歩と言う感じだなあ。
密室のポルターガイスト
豪邸の主兼田権一と婚約者が寝ているはずの部屋からうめき声、駆けつけると瀕死のドーベルマンが飛び出てきた。二人は部屋にいなかったが中央のベッドは切り裂かれ、部屋の西南の隅には金属製ロープ、東北の隅には青竜刀が転がっている。そして大きな電磁石が二個発見される。何が起こったのか!南側のガラス越し及び北側のウオークイン・クローゼットの壁双方から電磁石を使って、部屋の中のロープとそれに引っかけた青竜刀を縄跳びよろしくまわして、ベッドと犬を傷つけた、と言うのだがうまくゆくかなあ?
切り取られた手首
彼女は手首を切り取られ、両目をえぐられて殺された。メールによるダイイングメッセージはあかさか。けれが携帯電話の1231に対応し、殺害者のバイクナンバーになる、なんて子供だましで面白くない。
君は僕だけのもの
独占したい女を殺すが、犯行時刻には上海にいた、だから発覚しなかった?死体を冷所においたり、逆に暖かいところにおいて死亡推定時刻を狂わせるトリックは常識的。ただ見知らぬ男に付け回される恐怖はよく描けていると思った。
クレヨンの告発
地獄絵屋敷で幼い六道聡史は強度の脱水症状による心不全で死んだ。体内の水分量が不足したのだ。一見事故にも見えたが、生前のクレヨン描きの「水槽にはねる魚の絵」が犯罪を告発していた。彼はそばにある井戸水を毒と思い込まされたのだ。どうも話が暗すぎて好きになれない。
空から墜落した車
高級車転売を薦めて歩く男という設定が面白い。ランクルに乗る二人連れのきれいな女性の罠に嵌まって人里離れた河原に幽霊を見に行く。夜半に遅れている三人目を迎えに行くと一人が出て行く。素晴らしい環境!ところが遅れた三人目が河原の真ん中で自動車の下敷きになって死んでしまった。果たして幽霊の仕業か?ランドクルーザーのウインチで車を引っ張り挙げ、ワイヤをクリッパーで切って落とす、というアイデアは面白い。
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