東洋経済新聞社
この書は3年ほど前に書かれた書である。アジアの不況が拡大し、韓国はIMFの勧告を受け入れ、一方でサッカーのワールドカップを日韓共同で開発することが決まった頃である。教科書問題などは起こっていなかった。著者は昭和20年生まれ、毎日新聞ソウル支局長を経験したのち、滞米経験が長い。
・ 韓国は日本に比べれば小国である、追いつこうと思っても追いつき得ないジレンマがある。
・ 日本は韓国とつきあう際、大人になって欲しい
・ 日韓関係は長い歴史の目で見れば改善されてきている、
・ 韓国の目はIMFの助言を受け入れざるを得なくなって以来、反日から「それでも日本の経済発展が必要だ」との目に変わってきている、
・ ワールドカップは日韓関係を改善するための天が与えたチャンスである、
などとして日韓関係の改善が必要なことを訴えると同時に、韓国の実状をわかりやすく解説している。
韓国の実状についてまとめると下の様である。
・ 李承晩は日本からの独立運動家としては功績があったが、国家の指導者としては落第であった。アメリカ的民主主義を利用せず、韓国的な権威主義を独裁政治に利用した。1961にクーデターがおき、朴正きが権力を握った。
・ 金日成と李承晩は共に南北統一を願っていたが、朝鮮戦争が勃発。韓国は文字通り「反共の基地」となった。
・ 朴正煕は、貧困から韓国を救いたいと考えたが、アメリカ式を導入するには、「儒教的倫理」が優先する国であったから、「日本的システム」を導入して成長路線をつっぱしり成功した。しかし消費税問題などで飽きられ、1979年に暗殺された。
・ その後金泳三が大統領となり、朴正煕の政治路線を引き継いだ。当初はうまく行っていたが、本質的に両班出身で傲慢であったうえ、経済オンチであった。通貨危機に陥り、IMFの助言を受け入れたが、韓国民はこれを国辱と考えた。
・ 金大中は金泳三とライバルであった。彼の使命は世代交代とアメリカ型へのシステムの転換である。方針通り進んでいるように見えるが、経済の建て直しには、まだ3ないし5年かかる。一方で彼は政府幹部に対立する慶尚道出身者を排除し、全羅道出身者を登用し、政府の人気の低下をもたらしている。
・ これからの韓国について著者は教育水準の高さと熱心さを上げている。アメリカ博士号を取得したものが30000人もおり、日本に比べ、ケタ違いに高い。儒教的思想、両班などの問題は残るものの必ず名立ち直る!
日本の戦略は朝鮮半島で再び戦争をおこさせない、日韓が再び戦争をせず、信頼できる関係を定着させる必要がある、両国民の信頼関係改善、アジアと世界平和安定のために協力して貢献する、などでる。上述の検討に立ち、著者は、日本にとって韓国とは戦略的隣国である、という。そのために統一朝鮮との同盟関係が最終目的で、南北の統一、統一後の国造りへの協力がかかせないとしている。さらに踏み込んで日本がまだしも信頼できる国は韓国と米国をおいてない、と喝破し、日米韓関係が、日米中、日中露などとの関係に比べずっと大切であると主張する。
最後にそれを達成させるために理解しておくべき韓国人の日本人と比較しての特色を論じている。
・ 韓国文化は海外在住などを通して世界に広く浸透している。
・ 韓国で人気を得た小説に日本を植民地かするものがある。荒唐無稽だが、このようなものが人気を得る韓国人の心情を考慮すべきである
・ 韓国は大陸につながっているため、村八分にされても外にでていける余地がある。そのため日本人に比べ権利意識が強くたくましい。
・ 小国であったが故に論理と理屈に強い。倫理観も強い。
・ 一部に日本に有利な発言をすると親日派のレッテルをはられる危険性がある。
・ 日本と同様韓国にも相手が何もしてくれないと考える「くれない症候群」の者がいるが問題である
・ 歴史の共同研究より隣国の歴史を教えるべきである。その際近代韓国史は日本史そのものであることに留意しなければならない。
日韓関係、あるいは韓国の立場について書かれた本は非常にく、またその切り口もいろいろある。しかし日本と韓国が切っても切れない関係にあり、その関係がうまく行くことが日本にとって、世界から評価されるための絶対的な条件である、という考えは非常に重要であると思った。
・ 「金泳三大統領の功績は何か」という小話だ。「第一の業績は国民学校を初等学校と名前をかえたこと。第二は、南北朝鮮の所得格差を縮めたこと」韓国は、97年までは一人あたりの国内総生産(GDP)が1万ドルを越えていた。しかし金融危機に伴うウオン安で、6000ドルにまでさがった。(56P)
・ エジプトなどイスラム過激派の講堂は、貧富の格差が生んだ悲劇と解説されている。思想ではなく、世俗化の問題であると考える方が理解しやすい。世俗化が進行すればイスラムの聖職者や職業的なイスラム教の宗教指導者の地位が脅かされ、影響力を失うことになる。言い方を変えれば「イスラムの僧侶が食べていけなくなる」という事態が生じるからである。(79P)
・ 韓国の労働運動はかっての三井三池逃走と同じような労使紛争を経験していない。…経験と反省に基づいた労使のルールが確立していないのである。(108P)
・ 日本は世界的に見て他国から侵略を受けなかった国である。その最大の理由は、日本が海に囲まれているからだが、第二の理由は朝鮮半島が大陸からの脅威を防ぐ防波堤の役割を果たしたからだ。(138P)
・ 作家の故司馬遼太郎さんは、韓国人や朝鮮人と論争したら日本人は決して勝てない、と語ったことがある。(177P)
・ (かって日本の一部には)韓国を訪れる学者に「親韓派」と言った心ない非難が投げつけられた。韓国は軍事政権による「独裁国家」だから、そこを訪問することは「独裁国家を指示し、支援することになる」と主張された。その一方で、北朝鮮を「独裁体制」「非民主的」と指摘する学者はいなかった。(186P)
011014