韓国人の日本偽史   野平 俊水

小学館文庫

2002年3月日韓両国政府は、両国の歴史専門家が過去の歴史認識について議論し、相互理解をはかるための「日韓歴史共同研究委員会」を発足させた。

背景には日本の歴史教科書問題が日韓関係に大きな動揺をもたらしたことがあげられる。

韓国人の大部分は日本人の歴史認識について否定的な見方を持っている。日本人は「日本が過去の朝鮮半島(もしくは大韓民国)に対しておこなった侵略・植民地支配」に対して間違った歴史的認識をもっている、倭寇、文禄慶長の役、50年にわたる日本の植民地支配などに贖罪意識を持たず、正確な歴史教育をおこなっていない、と批判するのである。もちろんこのようになった経緯について、日本人は真摯に受け止めなければならない。

しかし韓国人が日本人の歴史認識を批判しているからといって、すべての韓国人が「正しい歴史認識」をもっているわけではない。多くの日本に関する誤った歴史認識に基づく「学説」が流布している。

この書はこういった偽史の例をあげ、その真偽を問うとともに、どうしてそのような考えが流布するようになったかを平易に解説している。

作者は野平俊水。1968年生まれ。天理大学朝鮮学科卒の若手で、韓国でも学び、韓国初の日本人出演者として韓国のTV番組にも出演中という。

第一章は「韓国人による文化伝達偽史と侵略偽史」。

「天皇は韓国人である」という冒頭では、根拠薄弱な「偽史」を通し、強引に以下の韓国人に受けのいい思想を普及しようとする傾向が見られる。

(1) 日本は韓国人が原住民を制圧して建国した国である。

(2) 皇室をはじめ日本の支配層は韓国人である

(3) 日本の文化は韓国人が伝授したものである。

またKoreaという韓国の国名の表記は日本による陰謀だ、という説にもびっくりする。国際舞台などでCoreaだとJapanの表記より先になるから気に入らぬ、と日本人がKoreaと書くようにしむけたというのである。

第二章は日韓合作による「偽史」。「神代文字は古代ハングルである」「高天原は韓国にあった」などのあやしげな説は必ずしも韓国人だけで作った者ではない。日本は戦前韓国を一体化させようという考えの中で、日本の起源が韓国であるかのごとき説を流布した。ところが最近はそういった説を、韓国人が日本人に対し優れていることを示すために転用している、というのである。

第三章は歴史歪曲の法則。

(1)日本人であれ韓国人であれ、歴史歪曲を行い偽史を捏造する

(2) 他人の捏造した偽史は歴史歪曲に見え、自分のやった歴史歪曲は歴史の再評価に見える

(3) 自らの歴史観に都合のいい史料は、何でも史料批判なしに利用する

(4) 歴史歪曲は善意でおこなわれる

との法則を打ちたて、例として日本の旧石器時代遺物捏造事件、韓国の別黄字銃捏造事件、「醜い韓国人」騒動などを取り上げて、著者は、あとがきで以下のように結論づけるのである。

(1)「自分の歴史に自尊心を持てるような歴史教育」が喧伝されているが賛成しかねる。「ためにする」歴史教育となって歴史の恣意的解釈と歪曲の温床になりかねない。

(2)日韓両国の歴史認識が接近することは望ましいが、歴史教科書編纂を通じておこなうという考えには賛成できない。

(3)歴史教育は学会において検証を経た客観性・妥当性のある定説が記述されるべきである。

日本人と韓国人が共通の歴史認識を持つことは無理である、と考えている。伊藤博文は日本ではお札になるほどの偉人であるが、韓国では暗殺した安重根が切手になっている。歴史に対する知識にしても、日本人が日本固有の歴史に集中し、韓国人が韓国の独立に執着することは当然と思う。それらは数ある事件の中からの関心ある事項の選択の問題と言える。しかし根拠のあやふやな歴史で国民を先導したり、外交問題に利用しようとする考えはすてなければならない。

一方で、この書は我々が歴史を振り返るとき、常に「真実は何か」を問え、と語りかけているようにも見えた。特定な思想にとらわれるところなく、正直な気持ちで書かれているところがよく、非常に興味深く読んだ。

(021120)