カラマーゾフの兄弟      ドストエーフスキイ


河出書房新社 米川 正夫 訳

 非常にむずかしくしかも長編なので、ノートを取りながら読んだ。
 この小説は非常に多面的な要素を持っているが、訳者のいうように主題は神との格闘であろう。それが「大審問官」、ゾシマ長老の遺言等を通じて、正面から取り上げられているが故に「不朽の名作」となったのだろう。その点はまったく異論がない。

 あらすじはノートを掲げるので特にのべない。

 しかし神に対する考え方では教えられるところが多かった。私はアリョーシャよりもイヴァンやスメルジャコフの考え方に引かれた。以下に気になった言葉と感想を掲げる。
 1神がいないとして、それなら私たちはどうして善行ができるのだろう、誰に感謝するのだろう、という問いかけは、現代日本にもあてはまる強烈な問いかけであるように思った。
 2「彼を苦しめた者どもを、どうして許すことが出来ようぞ?」このキリストの問いかけも良く理解できる。
 3「いったい僕はそんなに仕えてもらう価値があるのかしらん?」これも重要だ。
 4世界は馬鹿なことを足場として成り立っている、と言う考えは、強烈な皮肉のようでもあり、また真実の様にも感じた。
 5良心の呵責と言った問題も良く取り上げられている。
 6しかし「一粒の麦、地に落ちて死なずばただ一つにてあらん。もし死なば多くの実を結ぶべし。」の考えはどこに生かされているのかわかりにくい。

 一方でこの小説はドストエーフスキイがどう考えたかは別として、現代に通ずる探偵小説と解釈することもできる。しかしそのように限定して考えると問題点も多々あるように思う。

 第一にこの作品は未完である。読み終えて、何だかはぐらかされたような気がする。10年後、三兄弟はどうなっているのだろうか。
 第二に探偵小説的考え方から行くと、はなはだ不満足である。大体筆者と言うのが何者なのか分からない。
 第三に筆者はスメルジャコフの告白で真実を読者に知らせたというのだろうか。それならドーミトリイの犯行後持っていた多額の現金は、どこから得たのだろうか。半分とっておいた物なのか、どうか、どうも釈然としない。それともスメルジャコフの告白自体もインチキだと言うのだろうか。
 第四にイリョーシャなど少年たちの描き方が、いかにも教条的で感心しない。
 第五に女の気持ちの描き方も、なんとなくすっきりしない。
 第六にスメルジャコフは、なぜ自殺したのだろうか。自分の犯罪が露見すると考えたのだろうか。遺書にあるような内容と考えられるほど彼はお人好しには書かれていない。またその犯罪の動機は、金でないとしたならなんだろうか。
 この辺を修正して書き直したらどうなるのだろう、などと考えた。


・じっさいは余り正直すぎるほど喜んだものだから、それがいまいましかったのです。ああ、リーズ、あの人は本当に正直ないい人ですよ。(290p)
・ナポレオン一世がロシアへ大軍を率いて侵入してきたが、あの時フランス人がすっかりこの国を征服してしまうと良かったんですよ。利口な国民が、この上ないのろまな国民を征服して合併してしまったら、国の様子がすっかり別になったでしょうがねえ。(305p)
・僕は粘っこい春の若葉や瑠璃色の空を愛するのだ、それだけのことなんだ!ここには、知識も論理もない、ただ内発的な愛があるばかりだ。(312p)
・僕の知性はユークリッド式の物だ、地上的の物だ、それだのに、現世以外の事物を解釈するなんて事が、どうして僕らに出来るのかね。(319p)
・「近き物」だからこそ愛することが出来ないので、「遠き物」こそ始めて愛されうるんだと思う。(321p)
・罪のない子供(323p)
・隠遁者君、この地上においては、馬鹿なことが必要すぎるくらいなんだ。世界は馬鹿なことを足場にして立っているので、それがなかったら、世の中にはなにもおこりゃしなかったろうよ。(331p)
・彼を苦しめた者どもを、どうして許すことが出来ようぞ?(336p)
・(自由の意味を知らぬ者どもがお前にパンを求めて、お前の元に押し寄せたとき)お前は人民から自由を奪うことを欲しないで、その申し出を退けてしまった。・・・そのときお前は「人はパンのみにて生きるにあらず」と答えたが、しかし、この地上のパンの名を持って、地の精霊がお前に反旗を翻し、お前と戦って勝利を博するのだ。(343p)
・自由になった人間にとって最も苦しい、しかも絶え間のない問題は、少しも早く自分の崇拝すべき人を捜し出すことである。(345p)
・意気地ない暴徒の良心を、彼らの幸福のため永久に征服しとりこに出来る力は、この地上にたった三つしかないのだ。奇跡と神秘と教権である。(347p)
・一粒の麦、地に落ちて死なずばただ一つにてあらん。もし死なば多くの実を結ぶべし。(387p)
・いったい僕はそんなに仕えてもらう価値があるのかしらん?(392P)
・楽園はおのおのの人に隠されています。だから自分がその気になれさえすれば、明日にもその楽園が間違いなく訪れて、生涯失われることはないのです。(414P)
・殺した時は何も感じなかったが、自分が結婚し、幸せな生活を営むようになると後悔の念がわき上がる話(419P)
・欲望増進の権利からいかなる結果が生ずるか?ほかでもない、富者にあっては孤独と自滅、貧者においては羨望と殺人である。(428P)
・人間の罪を恐れてはならぬ。罪あるままの人間を愛すべきである。(436p)
・天使とねぎとおばあさんの話(479p)
・滑稽がなんです?人間が滑稽な物になったり、あるいはそう言う風に見えたりする事は、いくらあるか知りません。今日ではみんな才能のある人たちが、滑稽なものになることをひどく恐れて、そのために不幸になっているんですよ。(下262p)
・もしラキーチンの言うとおり、神は人類のもっている人工的観念にすぎないとしたらどうだろう?。そのときは、もし神がなければ、人間は地上の、・・・宇宙の頭だ。えらいもんだ!だが、人間、神様なしにどうして善行なんか出来るだろう?これが問題だ!おれは始終そのことを考えるんだ。なぜって、そうなったら人間はだれを愛するんだね?誰に感謝するんだね?。また誰に向かってヒムンを歌うんだ。(下312p)
・いわゆる「良心の呵責」といったような、ばかげたことがはやりだした。これもやはり君らの世界から「君らの人心の軟化」から来たことなんだ。だから、とくをしたのは、ただ良心のないものだけだ。(下382p)
・良心!良心ってなんだ?そんなものは、ぼくが自分で作り出してるんじゃないか。なぜ僕は苦しむんだろう。習慣のためだ、七千年以来の全人類の習慣のためだ。そんな物を捨ててしまって、われわれは神になろうじゃないか。(下395p)
・あの人(イヴァン)の考えによりますと、この世では何事も皆許されるのでございます。(下451p)
・ロシア人の心は極端な矛盾を両立させることが出来、二つの深淵を同時に見ることが出来るのです。我々の上にある天井の深淵と、我々のしたにある最も下劣な、悪臭を放つ堕落の深淵とを、見ることが出来るのであります。(下455p)
・彼(スメルジャコフ)は以前からよく言っていました。彼は自分以外の何者をも愛していない上に、しかも不思議なほどに自尊心が強かったように思われます。(下505p)
・お父さん、どうぞ聞かせて下さい、なぜ私はあなたを愛さなければならないのでしょう?(下515p)
・なんじ人をはかるごとくおのれもはかられるべし(下520p)

「カラマーゾフの兄弟ノート」
1ある一家族の歴史
フョードル・カラマゾフは、金を増やすことが上手で、居候から小地主にまで成り上がった男。好色漢で愛なく結婚した先妻との間に、ドミートリイ、二番目の病死した妻との間にイヴァン、アレクセイの三人の息子がいた。ドミートリイは、退役将校、素朴な情熱家で放縦な生活に溺れ、イヴァンは理工系だが、裁判を通じて国家と教会の関係を論じるなど秀才だが無神論者、アレクセイは博愛家で僧院の長老ゾシマに師事していた。

2不作法な会合
ある時フョードルとドミートリイが、遺産の分割の事で争い、一家は長老のもとに出かけた。しかし長老の前でピエロを気取ったフョードルがグルーシェンカの事などで、諍いを起こし、長老は席を立つ。追いかけてきたアレクセイに家に戻るよう言う。長老、フョードル抜きで食事が始まるが、フョードルが戻ってきて僧院の偽善をなじる、息子を連れて帰るなどとわめく。

3淫蕩なる人々
アレクセイが家に戻ろうとすると、隣の家にドミートリイがいた。彼は「カチェリーナから預かった金を使ってしまった。親父に3000ルーブル都合してもらうように言ってくれ。」などと虫の良い依頼。フョードルはイヴァンと酒を飲んでいたが、歓待する。しかしスメルジャコフの「異端に捕まって改宗をせまられて拒否して皮をはがれたキリスト教徒」批判に驚く。そこにグルーシェンカがこちらに来たはずだ、とドーミトリイが乗り込み、フョードルを殴りつけ、いないと分かって消える。アレクセイが事の次第を報告にカチェリーナの元に行くと、グルーシェンカが影からあらわれた。二人は最初仲が良いように見えたが、グルーシェンカがドーミトリイを諦めたわけでは無いことが判明し、大喧嘩、彼女は出ていってしまう。僧院に戻る途中、アレクセイに会うが彼は自分を悪党として消えてしまう。僧院でふとカチェリーナの女中の渡した手紙を見るとそれはリーズからの恋文だった。

4破裂
アレクセイは、瀕死の長老から「自分が劣った者と自覚しなければいけない。人を憎んではならない。」などの話しと長老の予言が当たった話しを聞いた後、一人庵室で修行しているフェラポントに会い、禁欲的な生活を教えられる。さらに科学と宗教についてバイーシイ神父の話を聞く。
薦めに従って自宅に行くが、父はまた歓迎する風でもない。ホフラコーヴァ夫人の家に向かうが途中で6人対一人の子供たちの喧嘩に行き会う。リーズが昨日の恋文は間違いという。さてカチェリーナは、ドミートリイを愛しているのか、それともイヴァンか。しかしイヴァンは、外国に立とうとしていることもあり、「あなたが愛すべきはお兄さんだ。」と去ってしまう。カチェリーナは、ドミートリイが侮辱を与えたオーゼルナヤのスロヴォエルス中尉に200ルーぶりの金を払ってくれるよう依頼する。予想したとおりあのいじめられていた子の家で、子の名はイリューシャ。一家は予想以上にプライドが高く、ドミートリイを怨んでいた。アレクセイが気を使いながら渡した200ルーブルを最初は喜んで見せたが、最後は踏みつけにした。

5Pro et Con
アレクセイはカチェリーナに報告するが、もう一度申し出れば受け取ると楽観的。一方で彼はリーズと打ち解け、恋を語る。イヴァンのもとに向かう途中、マリアと一緒のスメルジャコフに出会い、反ロシア的な話しを聞く。
そしてイヴァンとの長い会話。イヴァンの実存主義的な哲学が明らかにされ、一方でキリスト教の矛盾が指摘される。所詮パンの名において、キリストは、民の自由を奪い、従えようとしているのではないか、あるいは子供やキリスト教徒を惨殺した者を許せるのか等。アレクセイは、キリストが民の罪を引き受けることによって民を信仰させていると反論する。
イヴァンは、自分の作った「大審問官」という劇詩を披露し、どうだと言う。16世紀にキリストがあらわれるが自分の理想とした自由を求めた社会が、とてつもなく変質させられていることに驚く。そこに大審問官があらわれ、キリストよ、あなたはここにあらわれてはいけないのだ。あなたが与えようとした自由と言う物は、苦痛を伴う物だ。一部の人をのぞけば、隷属を望んだ。そこで我々は、奇跡と教権と神秘の名の下に彼らの提出する自由を受け取った。お前には、あの世の秘密を伝える権利など無い、と言って大審問官はキリストを獄舎につないだ。これからは人間の自由な知恵と、科学と、アンスロポファジイの放恣きわまりない時代が続くだろうが、最後に神秘と隷属の中に、平和と幸福の時代が訪れるのだと説く。しかしそれは無神論者の言うことだと、アレクセイは非難するが物別れに終わる。やがて躊躇する気持ちと別れる際になってくどくどというフョードルを捨ててモスクワに向かう。フョードル家ではスメルジャコフが事故で怪我を負い、グリゴーリイが足がたたなくなり、大変なことになった。

6ロシアの僧侶
ゾシマ長老が臨終の床に際し、考え方をのべた。
(A)ゾシマ長老の歳若き兄
無神論者だった兄が最後に、罪の深さを認識し、信心深くなった話
(B)ゾシマ長老の生涯における聖書の意義
ヨブ記の中で、主はどういうわけで自分の聖者中もっとも愛する寵児を悪魔の手にゆだねたのか。兄たちの陰謀でエジプトに追いやられたヨセフが再会して何を思ったか。あれほど大きな馬の慎ましさの話。
(C)俗世にありしゾシマ長老の青年期に関する回想・・・決闘
ある時女をとられて相手を決闘するようし向けた。前夜召使いを殴ったことで目覚め、翌日は相手に一発撃たせてそれから謝った。そして軍隊を辞めた。
(D)なぞの客
ある裕福な慈善家と懇意になる。彼から「若いとき自分は他人の元に走った女を殺し下男に罪を転嫁した。」との告白を受ける。自分に正直なことの大切さを説き、自白を薦める。
(E)ロシアの僧侶とその可能なる意義について
欲望うずまく巷を捨てて、自分を罪深い者、他人に感謝するという精神世界に生きることの意義を説く。
(F)主従について 主従は精神上に兄弟たりうるか
軍隊を去った後、私は僧侶の道に入り、何年かしてあの決闘の前夜殴りつけた召使いに会い、暖かく迎えられた。謙虚、温順なることの大切さを説く。
(G)祈祷 愛 他界との接触
祈祷と愛の大切さを説く。そしてそのためにキリストの存在を説く。
(H)人は同胞の審判者たりうるか?最後までの信仰
人は何人の審判者となることもできない。自分も目の前にたっている人間と同じように犯人であると認識せよ。復讐の希望が憤りと悲しみを感じさせるならば、こうした心持ちは何よりも恐れ避けなけれなならぬ。
(I)地獄 地獄の火 神秘的考察
地獄とは「もはや、愛しあたわざる苦悶である。」神は「われあり、ゆえに、われ愛す。」という能力を授けられた。これが出来なくなる状態を言うのである。

7アリョーシャ
ゾシマ長老の死体から腐屍のにおいが発散したため、「生前の行いが正しくなかったからだ。」と非難する者が出始め、アレクセイは悩んだ。特にフェラポント神父の動きは露骨だった。そんなアレクセイをラキーチンがグルーシェンカの元に連れて行く。彼女は、アレクセイを一方的に尊敬するが、初恋の男ポーランド人のシャローヴィッチが来ると聞いて、自分が去ることおよびドミートリーによろしく伝えるよう頼む。僧院に戻ったアレクセイは、一人聖書を唱えるバイーシイ神父のもとに行く。そして夢うつつの中にゾシマ長老が復活するのを認める。覚醒するといっさいにたいしてすべての人を許し、それと同時に、自分の方からも許しを恋いたい衝動に駆られた。「天使とねぎとおばあさんの話」は芥川の「蜘蛛の糸」の原型か?

8ミーチャ
ドミートリーは、カチェリーナに3000ルーブルを返さなければならないのだが、ほとんど文無しだった。そこで商人サムソノフの元に赴き、彼がフョードルから遺産として受け取れると考えている財産のかわりに、その金を貸すよう要求するが断られる。次にその紹介で農夫レガーヴィイの元に行くが、ここでも侮辱をうけるだけ。戻ってピストルを友人ベルホーチンに売りつけ、ホフラコーヴァ夫人の元に赴くが、ここでは金鉱探しに行けとからかわれた上、借金は断られる。そして銅製の杵を持って飛び出す。フョードルの屋敷に忍び込み、追いすがるグリゴーリイを殴って闇から出てきたときには大金をもち、血だらけだった。
彼は、ベルホーチンの元からピストルを回収し、グルーシェンカが初恋のポーランド人ムッシャローヴィッチに連れられて向かったモークロエに向かう。彼らの部屋に乗り込み、金をばらまき、馬鹿騒ぎをしたあと、ポーランド人を叩き出し、グルーシェンカとよりをもどす。
しかしそのとき予審判事、警察署長等が到着し、ドーミトリイを逮捕する。

9予審
ドーミトリイは、その夜の経過をありのままに話した。ただ彼は父を殺してはいない、スメルジャコフに教えられた合図で入って行ったときには死んでいた、そこで逃げ出したがグリゴーリイが追ってきたため殴りつけた、ホフラコーヴァ夫人から3000ルーブル借りたなどと主張した。そして夫人が金を貸したことを否定し、フョードルの元から3000ルーブルなくなっていると聞かされると、スメルジャコフが犯人ではないか、などと言い始める。
金の出所を問いつめられて、カチェリーナから1ヶ月前に3000ルーブル借り、1500ルーブル使ったが残りを袋に入れ胸に下げていたが、それを取り出して使ったとのべた。しかし周囲の発言は、どうも1ヶ月前も今回も3000ルーブル持っていたらしいと言うことで、主張は受け入れられない。
容疑者が犯行を否認したまま判決がおり、ドミートリイはしばらく収監されることになった。

10少年たちの群れ
破裂の章で登場したイリューシャをいじめた子供たちの話。コーリャは、優秀な子だがいたずらっ子だった。友人のスムーロフと共にアレクセイに興味を持っていた。アレクセイが彼を大人として遇したため、尊敬するようになり、彼の薦めでイリューシャと仲直りしようと考える。アレクセイは、コーリャの受け売りの知識に苦笑いしながらも彼の純な心を認める。仲間と共に病気になったイリューシャを見舞いに行くが、イリューシャの精神的負担が、針を入れた団子をジューチカという犬に食わせた事と聞き、自分の犬ペレズフォンを連れていく。ところがペレズフォンがジューチカと知ってイリューシャは大喜び。

11兄イヴァン
グルーシェンカは、カチェリーナに対抗意識を燃やしてドミートリイを愛し、かつ彼の無罪をあくまで信じていた。ホフラコーヴァ夫人は、ラキーチンが病める足などという夫人を揶揄した詩を書き、風説誌にいいかげんな記事を書いたことを怒り、犯人はグリゴーリイだとわめく。彼女は、なんとかアレクセイにリーザを助けてもらおうと思う。しかしリーザは、人間不信の様子でイヴァンへの手紙を彼に委託してだしてしまう。アレクセイはさらに牢獄にドミートリイを訪問するが、彼は自分は殺していないが、罪に服する覚悟で、生まれ変わって生きるなどと述べる。カチェリーナのもとにいたイヴァンは、カチェリーナの示した数学的証拠?でドミートリイを疑っていたが、アレクセイに指摘されて別の犯人を考え始める。
アレクセイと別れたイヴァンは、犯人はスメルジャコフと決め込み、三度にわたって病気で弱った彼を訪ね自白をせまる。ところが最後に彼は「確かに殺したのは私だ。しかしお父さんの死を願い、私にそうするようそそのかしたのはあなただ。私は機械に過ぎなかった。」と主張し驚かせる。そして証拠に品としてあの封筒から取り出した3000ルーブルを並べてみせる。二人は明日出頭して真実を述べる、あなたにはそれができっこないと別れた後、スメルジャコフが首をくくって自殺してしまう。彼を犯人にする証拠は何も残らない。

12誤れる裁判
裁判が始まるが裁判官、弁護人はともかく陪審の12人は役人、商人、百姓などおよそ似つかわしくない人物ばかりだ。
尋問で検事は、次々と証人をたてて被告の有罪を立証しようとするが、弁護士のフェチュコーヴィッチは、証言が怪しげであることを次々に証明してみせる。ドアが開いていたと証言したグリゴーリイは大酒を飲んでいたし、正論らしき物を述べたラキーチンはアレクセイから案内料を受け取っていたと言う具合だ。医学鑑定はあまり、ドーミトリイ弁護に役立たなかったが、アリョーシャの突然ドーミトリイが胸をさして言ったという証言は弁護に始めて訳だった。イヴァンが3000ルーブルを出して金はここにあるから盗んだ訳はない、と弁じるがグルーシェンカにあしざまに言われたカチェリーナがヒステリイを起こし、ドーミトリイが酔ったときに親父を殺すと書いた書面を公開してしまう。
以上の経過があって検事イッポリートが性格論から発して、ロシア人の二面性を論じ、スメルジャコフ犯人説を否定しつつ、被告の言う1500ルーブル取ってあったなどと言う議論を粉砕してみせる。一方弁護士は現場に発見されたから封筒はフョードルが開けた物かも知れない、本当に殺したならグリゴーリイの身を案じるわけがない、仮に殺したとしてもフョードルは父と呼ぶに値しないから罪にならないなどと弁護する。
しかし陪審員の決定は有罪であった。

13エピローグ
イヴァンは、ドミートリイがシベリアに送られる時に脱走させ、アメリカにでも送ろうとと考え、カチェリーナやドーミトリイに相談。脱走しようと言う話にはなるが、カチェリーナとグルーシェンカの対立は埋まらない。
イリューシャが亡くなり、コーリャ等の暖かい見送りの中葬られる。

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