中公新書
この書の魅力は第3章以下の実際に都心でカラスを捕まえて、その行動などを追った実験である。東京都の有害鳥獣駆除の目的で設置された捕獲用の箱わなを利用させてもらったのはいいが、取り出すときに苦労する話、全部ハシブトガラスで重量が平均700グラム強であった話、遠くから見ているとどれもこれも同じ様に見えるが重さも顔つきも羽の艶もそれぞれ異なっている話、飛んでいるカラスを識別するために足輪やカラーリングをする話、発信機の苦労話など実際に体験してみないと分からないものだ。
都心のカラスはそれぞれに1000メートル間隔くらいで餌を取るための縄張りを持っている。その縄張りが最近小さくなってきている。考えてみれば生ごみなど発生量が多くなれば、縄張りが小さくてもいい、という話もうなづける。
カラスは1日1卵づつ4-5日産む。雌親によって約20日間抱卵されて孵化する。最初は羽が生えていないから、ピンク色だが、次第に黒色化してくる。雌親はずっと抱雛し続け、孵化後約1ヶ月で巣立ちする。巣立っても、およそ20日くらいは、家族郡を作って生活するが、その後縄張りを出て幼鳥郡の仲間入りをする。巣作りまで入れると子作りには3ヶ月以上を要する。巣立った雛を守るために親カラスが人を襲ったりするトラブルは、雛が巣立つ5月下旬から6月中旬に集中する。
完璧な雑食で、残飯等は当然だが、魚類や甲殻類、車に引かれた猫の死体、山で遭難した人の死体、バイソンの糞、何でも食う。腹の中を調べると食えない輪ゴムなども食うというからすごい。その上、他の鳥やその雛や卵に目をつける。ドバトなど都市鳥はよく襲われる。開放型の巣は都市ではすぐにカラスの攻撃を受けるから見られなくなった。スズメなどは木のうつろなどに巣を作るが、カラスは毎日パトロールして雛が育つのを待って襲う。飛行能力の弱い雛はひとたまりもない。
頭脳のよさの話も思わずうなる。捕まえて餌を与え、足輪などつけて離すのだが、あるカラスは何度も捕まる。どうも足に触られるくらいで餌にありつけるなら、つかまろうと考えているらしい、などびっくりした。そのほかにも2羽がペアーになって陽動作戦で猫をつついたり、オオタカの卵を失敬する話なども面白い。
なんとなくカラスに親しみを覚えた。彼らも大変、そういえば彼らが一番恐れるのはやはり人間様とか・・・。そうはいいながら最後に著者のあげるカラス対策。
1)カラスを被害場所に接近させない。目玉模様、カラス自身の死体、空砲、匂いなど
2)捕獲機による生け捕り
3)銃による射殺、毒物による毒殺
4)カラスの繁殖や繁殖成功率を抑制する。巣を取り壊す、ホルモン摂取等
5)カラスの生息環境を繁殖や採餌に不向きなようにする。ゴミ処理方法の改良等。
しかしどれも決め手になるというわけではなさそうで、当分はカラスと人間の知恵比べが続きそうだ。