からくり砂絵 都筑 道夫


光文社時代小説文庫

同じシリーズの5巻(きまぐれ砂絵)では、すべてが落語から取っているが、これはその先駆けのような作品が多い。

花見の仇討ち・・・・釘を頭に打ち込む。
向島の花見の季節に、むかで模様の編み笠侍と、巡礼が敵討ちを演じて見せ、最後に六十六部が仲裁に入るという趣向だったが、途中で本物の浪人二人が助太刀に入る。巡礼姿の若旦那がタケミツのはずの剣を抜くとそれがいつか本物に入れ替わっていて、浪人の一人を斬り殺してしまった。なぜ本物の剣に変わったか、剣を使ったことのない若旦那がなぜ浪人を殺せたか、などが謎。実は若旦那は傷をつけただけ、犯人は逃げた浪人で、彼は本来大工。相手の髷の中に柄頭に仕込んだ釘を打ち込んだものだった。

首つり五人男
路地に五人の首吊り死体。そこだけがこの話の魅力。オヤマの人気役者菊の丞が半陰陽か、どうか確かめようとしている内に殺してしまった、首吊りの作業中に誤って死んだ、番屋に届けようとした二人を口止めで殺した、この機会に気に入らない奴を殺した、などで最後に五人まとめて吊した等が事件の概要。

小梅富士・・・・石につぶされて死んだ隠居
桑名屋の隠居が、庭にある富士山の形をした石に座敷で押しつぶされ、死体となって発見された。死ぬ直前、隠居は、医者も含めて周囲に人を近づけなかった。そして、下男の藤吉が首をくくって死に、下手人と言うことになった。実は盗人一味が、かって五千両を庭石の下あたりに隠したが、それを取り返そうと、六平太が桑名屋の隠居を殺し、なりすまし、同時に桑名屋に下男として入った藤吉と掘り返そうとした。しかし事故で、六平太が死に、さらにそれを知った店の男が藤吉を自殺に見せ掛けて殺し、五千両を奪い取ろうとした。

血しぶき人形
掃除をするからくり人形が、伊勢屋の主人幸右衛門を斬り殺した、と言うのがこの話のミソ。実は昔の仲間の貧乏侍が、仕官の道が開けたので、質にいれた刀を取り返しに言ったところ、主人と争いになり、殺してしまった。

水幽霊・・・・幽霊は寝小便隠し
気がつくと部屋と夜具がびっしょり、そして水神様を修理した大工富蔵の水神にたたられたとしか思いようのない死。最初の事件は水幽霊、と騒いだのは実は娘の寝小便隠し。では娘はなぜ、寝小便をするまで緊張していたか・・・。富蔵の死は事故隠し。

粗忽長屋・・・・私が死んだ
「センセーが死んでいる。死体を引き取りに行こう。」とセンセーのところに下駄常が乗り込む。センセーが調べると盆の窪と髪の間に針を打ち込まれたのが原因。実は下駄常は小柴仙四郎からセンセーを何とかしろ、と言われていたが、たまたまあんまに殺された男の死骸があったので、それをセンセーに見立てて、二つの問題の同時解決をはかったのだった。最後に人混みに紛れて同僚を殺そうとする仙四郎の腕をセンセーが押さえて・・・。

らくだの馬・・・・死人が踊る
らくだというあだ名の世間からの嫌われ者が河豚毒で死んだ。乗り込んできた手斧目の半次が屑屋を使って、死人にかんかんのうを踊らせ、大家から金を巻き上げたり、料理を用意させたり・・・。 ここまでは落語の通りだが、もう一回それをまねする奴が現れたり、実はらくだは大家に殺された事が分かったりして・・・・。