光文社時代小説文庫
この巻に限り、下本に落語を使っているため、筋立てが少し変わっている。しかしその分トリックに焦点がおかれ、面白い作品もあるようだ。
長屋の花見・・・・他殺に見えた心中
貧乏長屋の連中が飛鳥山に花見に行く話。ここでは「樽の酒を水に変えたら金をやる」といわれ、喧嘩や飛鳥山の土器投げで客の視点をそらせ、その間に水に変えてしまう。ところが飲んだとたん全員が苦しみだし、三人残して皆死亡。さて、犯人は、毒は、と言うのだが実は商売が行き詰まっていて一家心中下のだと言う結末はちょっとがっかり。
舟徳・・・・歯から毒
若旦那がなれない船頭になろうとする話。ここでは船宿の女将さんが麦の蛇人形を見せられ、気絶、そのまま蛇にかまれたような症状を呈し、死んでしまうが、噛まれた傷はない、では殺害方法は?と言う物。結論が歯の傷から毒が入ったとわかり、「赤後家の殺人」(クラーレ使用)と同じ、やられたと思った。最後の蛇の投げ合いが面白い。
・蝮の毒というのは、親分、血の中に入らなけりゃあ、毒にゃあならねえんです。(70p)
高田の馬場・・・・首なし死体
回向院で蝦蟇の油売りとサクラの客が仇同士を装い、いざ、高田の馬場となったが双方現れず、客は金をただ取られ。しかし額は大きい。その仇役岩淵伝内が殺され、さらには油売りの方の男と女が首無し死体で見つかった。センセーは犯人は伝内、油売りとの生活に飽きた女とみたが、高田馬場の一件で礼金を渋った取り方銀蔵一味の犯行。
野ざらし
「大川の洲に浮かぶ死体に酒をかけ、若い娘をよみがえらせ・・・。」と言っていた八五郎が絞殺された。長屋の八五郎の隣は尾形清十郎という浪人、ここにお千代という粋な女が通っていたが、これが犯人らしい。なぜ?実はお千代は尻に彫り物のある悪党、それが仇をとりに清十郎に近づいたのだが、清十郎が気づき、今度はお千代を死んだ下手人にしたてようとした。清十郎も元はと言えば大泥棒、少しくらい取ったって、罰はあたるまい。
擬宝珠・・・・ない物で脅し
雪の振る日、擬宝珠をなめることが趣味の和泉屋の若旦那福太郎が鍋を頭にのせて死んでいた。実は和泉屋は苦しく、同郷の奈良屋を強請ろうと考えた。そして五重の塔に登り、何か書き付けを隠した様子。これに気づいた奈良屋側が和泉屋には分かるが世間には分からぬ方法で福太郎を惨殺したもの。
夢金・・・・悪の連鎖
雪降る夜、道に迷った大店の娘を送って、礼金をせしめたとアラクマは有頂天。ところが娘がその前にあった浪人が、中州であいくちで刺されて殺されていた。実は手代を切って娘を手に入れた浪人が、金八のチョキ舟に乗りこんだ。その浪人を殺して金八が娘の金を奪って、娘を放り出した。ところが金八の金をまた盗んだ奴がいた。親方の清七。金八が小判の夢を見るわけだ。