中公新書クラレ
証券会社に行って驚いた。「日本の銀行所有の国債が66兆円、それが2割でも下がってご覧なさい。10兆円以上の資産が吹っ飛んでしまう。そこで時価評価などしようものなら、不良債権がまた膨らんでしまう。そこで銀行が売られているのです。」そこでこの本を買ってきた。国債暴落とは何かから始まり、可能性のある原因をあげ、起こりうるかどうかを検討している。
国債は固定クーポン(利息の引換券)のついた金融資産である。市場の金利が上昇すると価格が下がってしまうという価格変動リスクを持っていると言える。国債暴落とは市場金利が急上昇して国債の価格が下がることである。発行残高370兆円の国債の利回りが、すべて1%上昇した場合、価格のマイナスは約15兆円と試算できる。超低金利時代で、日本国債は世界史的な高価格水準にある。
国債が暴落すると国の資金調達が困難になる、財政赤字がとまらない、などの可能性が生じる。ただし企業活動が盛んになった結果、生じるのであればそれは「よい金利上昇」という事が出来る。ただし逆に企業の投資活動が抑制され、縮小均衡に陥る恐れもある。海外との関係で言えば為替が円高に触れ、その結果、輸出を抑制して不況時の回復を妨げやすい。
次に国債暴落の可能性を秘めるシナリオをあげる
1 国債残高とプライマリーバランス
2 日本国際格付けの格下げ
3 国内投資家の売却圧力
4 キャピタルフライトの可能性
5 海外投資家の売却圧力
6 量的緩和・インフレターゲットのインフレ圧力
7 クラウドアウト議論
8 デイスインターミデイエーション
9 量的緩和によって貸出しは増大しないのか
これをさらに要約し、次の三つの論点として集約する。
1増加する国債を買うお金(余剰資金)が市場に存在するのか。お金がなければ国債を買うことが出来ず、当然国債は暴落する。
2増加するリスクを受け入れるだけのリスク許容力が市場に存在するか。お金があっても国債のリスクを受け入れるだけの体力がない、つまり、投資家が買えなければ、当然国債は暴落する。
3増加する国債は確実に償還されるのか。償還の確実性が大きく低下しているなら当然国債は暴落することになる。
著者の出した結論では国債暴落の危険性は現時点では可能性が少ない、としている。さらに以上の議論をふまえて、さらに以下の三点に言及している。
1日本の適正金利水準はどのくらいか
2破局回避のために…・・国債管理政策の重要性
3経済再生まで日本はまだ何年
結論として、日本経済再生のためには必要なときに、国債管理政策をとるなどの施策が必要であると訴え、同時にバブル崩壊の後遺症から抜けきるまではまだまだいくつかの段階が控えており、長期化を覚悟する必要があるという事ではないか?と予測している。
特に中盤以降記述がかなり専門的であるが、国債暴落をテーマに日本経済の現状を理解する格好の教科書であると思う。
・国債は市場の金利が上昇すると価格が下がってしまうと言う価格変動リスクを持っていると言える。国債暴落とは市場金利が急上昇して国債の価格が下落する事なのである。
(4p)
・経済活動が停滞しているにもかかわらず、金利が上昇すれば、企業の投資活動はますます抑制されて経済が縮小均衡におちいってしまうのである。また海外との関係で考えれば、国債金利が上昇すれば、他国との金利差の縮小によって為替が円高になりやすく、その結果、輸出を抑制して不況時の経済活動を妨げやすい。(18p)
・ 話題になった国債を題材にした小説のハイライトは10年国債の入札不振で、入札限度額に実際の応募額が達しない状況(末達)になった点にある。…・ただし、10年国債のシンジケート団引き受け制度を前提に考えると、こうした懸念される状況は絶対に起こり得ない。…・シンジケート団は新たに発行される国債の発行予定額全額の発行を保証する機能を持っている。(31p)
・ 日本のように経常収支が黒字の国では「対外バランス」上、海外からの資金でファイナンスが行われる必要性は他国とくらべて低い。(34p)
・ (アメリカ)資金需要の拡大期に国債価格支持制度が取られた。国際価格支持制度とは、政策当局が国債の安定的価格での買い支えを実質的に保証したことで…・。(54p)
・ 日本の機関投資家は海外投資の自由化された過去二十年余りの間、80年代はアメリカ国債に、90年代は欧州債への投資を行ってきたが、収益は必ずしもよくない。(70p)
・ 対外バランスが安定的に黒字状況が続く中で円安基調を導くにはよほど大きな海外資金シフト要因を想定する必要がある。また、円安になった場合にはさらに対外黒字が拡大する可能性もあり、サステナブル(持続可能)な円安圧力が他国と比べてかかりにくい特徴を持っている。(71p)
・ 「増加する国債を買うお金はあるか」の問いの結論は「企業の過剰債務の削減は継続する可能性が高く、少なくともマクロ的には国債を買うお金は引き続き存在する」となる。(84p)
・ 投資を行うことが可能な対象は…企業がバランスシートを圧縮する状況下では投資機会は減少する。一方投資可能な資金を金融機関の資金量とすれば、おおむねマネーサプライで近似されるが、その額は前年比3%以上での増加となっている。結局投資期会の現象と投資資金の増加というアンバランスが低金利と低スプレッド(金利差)をうむ事になる。(120p)
・ アメリカの場合、圧倒的に長期の性格を持った資金が多く、また、確定債務ではない実績配当型である投資信託、年金の資金のウエイトが大きな構造になっている。(133p)
・ 1940年代当時のアメリカは時価会計を放棄していた状態にあったが、現在日本は時価会計を前提とした対応が迫られていることは重要な相違点である。アメリカにおいては1920年代までは有価証券の時価会計が行われていたが、30年代の大恐慌に対応して取得源か主義に回帰したというのは興味深い点である。(149p)
・ バブル崩壊の後遺症から抜けきるまではまだまだいくつかの段階が控えており、、長期化を覚悟する必要があるという事ではないか?…・国債暴落懸念?国債管理政策?(2007)本格的金利上昇?(2013)
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