中公新書
客のでたアパートを点検に行ったところ、風呂場に排水溝から上がってきたのか15センチくらいのミミズが横たわっていた。何か懐かしいものを見ているようだった。都会化したからか、最近私の周囲でミミズを見かける事が少なくなった。
「ミミズのいる地球」を読む。
理解しにくいところもあったので、同じ著者の「ヒトとミミズの生活誌」、渡辺弘之「ミミズのダンスが大地を潤す」に目を通す。
ミミズについて少し基本的なことを述べてみよう。
ミミズは、指輪状・環状のたくさんの体節がつながった円環状をなしている。いつも体液を出しておりぬるぬるしている。体節のまわりから短い剛毛をだしている。剛毛を土のトンネルの中で壁に押し付け、滑らないようにし、体節をうごかしてすすむ。
内部形態は簡単のようだが、ヒトの体と機能的には同じ様な器官を有している。体節に分かれた管状の体の一端に口があり、他端に肛門が開口している。神経系、消化管系、循環器系、生殖器系など生命現象を維持する器官が発達している。肺や鰓のような特定の器官をもたず、皮膚呼吸をしている。閉鎖血管系でヘモグロビンを血色素とする血液がガス代謝および栄養の代謝をおこなっている。特定の目はないが光には反応する。
一般には土壌層で生息し、植物の腐敗や微生物を食物とし、それらから生命を維持できる物質を生産している。湖沼、地下水、洞窟などに生息するものも多く、中には海の中で生きるものもいるとか。その種類は1800とも2700ともいわれている。大きいものは数メートルにおよぶ。日本産ではシーボルトミミズなど大きい。ただ皮膚呼吸のみのため、なにかに書いてあったが、ある程度以上太くはなれない。
ミミズは雌雄同体である。
成熟した固体は、一匹で雄性穴と受精のう孔の両方を持っている。ただ一般には他の個体と交接して、お互いの精子を交換する。産卵は交接後1週間くらいから始まるが、孵化までの時間は温度などによって大きく変わる。寿命は数年に及ぶものもあるが春に孵化し、夏に成熟し、秋に産卵したあと死んでしまうものもある。
ミミズは農作物への加害、寄生虫の伝播、有害物質の濃縮など否定的な面もなくはないが使い方によっては大いに利用できる。
土壌粒子の粉砕、中和、孔隙の造成など、土壌の改良に大いに役に立つ。70年代の終わり頃この点に着目してミミズ養殖がブームになったこともある。しかしその場所の土壌に適したミミズをみつけることは、案外難しいようで現在では一部で行われているに過ぎない。ミミズは他にも魚釣りの餌・食用、産業廃棄物・生活ゴミの処理、養魚・養殖の飼料、薬品などに利用されている。
この本は、半分以上が著者の研究活動の紹介に費やされている。「土の中のミミズの調べ方」、「代謝量の測定」、「生存曲線と成長曲線」、「土壌におよぼす土壌動物の影響」「分類の苦労」等。それらに加え、著者が研究の一環で訪問したポーランドの森、ケニアのサバンナ、パプア・ニューギニア、ハワイ、モンゴル、ガラパゴス、タヒチ島、モーレア島などの活動記録を手短に紹介する。しかしそうしたことを通して著者は一般読者に次のようなメッセージを送ろうとしているようだ。
「ミミズは、すでに数億年前から、人間よりもずっと長い間、地球上に生き続けてきたが、意外にポピュラーでなく、蛇、ゴキブリなどと共に嫌われ動物の典型である。そばにいる割りに古典などに取り上げられることも少ない。
しかしミミズは、モグラや鳥に食われ、さらにそれらはより大きな動物に食われことによって食物連鎖の重要な一環をなしている。従って殺虫剤の散布などによってミミズが汚染されれば、弱い小鳥がいなくなるなど環境に大きな変化を与える。ミミズがいなくなることは、それだけでわれわれ自身の生存環境が犯されていることにほかならない。ミミズは一種、環境のバロメーターだ。ミミズのいる地球を守り続けたようではないか。」