日本経済新聞社ハードカバー
著者は東京大学で心理学科を専攻したあと、横浜市立大学医学部を卒業し精神医学関係業務に携わり、現在は独立して患者の相談に乗っている人物。親の自己中心が子の自己中心を産み、それが社会をおかしくしている、という基本的考え方に同意を覚えたため購入する気になった。読み終えて、銀行員の妻に収まり、専業主婦で子育てに励んでいる娘に読ませてやろう、と考えた。
1 自己中心の時代
子供の自己中心性が増している。公務員や医者に診られるように大人もひどく、もはや「日本病」としか言いようがないくらい。
2 なぜ自己中心になるのか
母親中心の家庭が子供をしつけられず、過保護になり、やがて子が強くなり、家庭内暴力に発展し、登校拒否につながる。
・核家族では、父親は会社にとられ、母親と子どもだけが家にいて、密着度が高く、力関係から言って父親を上回っている。(31P)
3 心の病と自己中心
自己中心はいろいろな形で姿を現す。分裂症は自閉的、うつ病は他人本位、パニック障害などは自己中心、過食症や拒食症は愛情欲求、人格障害は自分が中心にならないとすまないといったものが原因となっている
4 自己中心の子を産む温床
父と母よりも母と子の結びつきが強く成りすぎ、子の独立への芽をつみ、自己中心の子を育てている。
・子供中心主義というのは、学歴社会、それが少子化に結びついたこと、さらに父親の権威が完全に力を失ってしまった事によって生じた。(54P)
5 子供を支配する親
身勝手な離婚母や思い通りに育てたいとする暴力父は、子供を支配しようと考え、結局子供をスポイルしている。子も又人格のあることを認識しなければいけない。
6 過剰な親の愛情
母の所有物としての娘、溺愛などの危険性を説く。援助交際すら親の過保護から生じる。
・過保護は、「虐待」と変わらないものであり、子供に倫理観を育てることなく、どう生きたらいいかという目標を自分で見つけることもできないと言うことになる。(85P)
7 先生や学校の保身
暴力教師を放任、部活のリンチを黙殺、いじめに真剣に向き合わないなど学校には「事なかれ主義」が横溢している。ただ親は非難する以前に過保護に向き合う必要がある。
8 荒れる教室からも回避
ADHDの存在を無視したり、荒れる教室を回避するなど教育関係者も問題。
9 欲望に走る親たち
リストラを吹聴する幹部、不倫に開き直る役人など親の自己中心が子に反映する。
10 精神科医は信頼できるか
特に変わり者が多く、挨拶が出来なかったり、患者と関係するなど精神科医としての基礎が出来ていない物が目立つ。
11 典型的自己中心に見る心の奥
太宰治、山頭火、ヒットラーの自己中心主義を分析し、その心の奥底にある物を探る。
12 失われた共同体
現代都市部では、昔の共同体としての特質がなくなった。隣同士助け合うことがない。市民運動などを通じ、新しい共同体を模索し、自己中心化に歯止めをかける必要がある。
13 人との交わりが欠かせない
本当の自己中心は大切だが、協調・共感できない若者が目立ちすぎる。人を通して自分自身を発見するとことを理解する必要がある。
・人は汝を通してわれとなる。(176P)
・自分自身の自己中心性を追い求めていった結果、その果てに人と結びついてしまうのである。(184P)
14 共感は創造の力
人間としての最高の能力は共感。ニーチェもサルトルもこれによって大作をなしえた。共感をどう育てて行くかが、教育の目標である。
・人間としての最高の能力は共感にあると言ってもよいだろう。(188P)
・共感なしに文章を書くことは出来ないし、文学も成り立たず、また共感のないところに、絵画や音楽も成立しない。(191P)
・共感性をどう高めて行くかが、我々の教育の大きな目標なのである。(198P)
E 自己と他者の融合
人間の心は自己中心性と他者中心性の間を揺れ動いており、そこのバランスをとり、うまくかみ合わせることが必要、これをヒューマニテイと呼ぶ。自己中心で生きてきたニーチェは人間(ザロメ)への熱い思いに目覚めたとき、あのツアラツストラを完成させた。
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