新潮文庫
この作品は1985年から6年にかけて週刊朝日に連載されたもので、その前に書いた「村上朝日堂」の続編という趣である。しかし「村上朝日堂」が見開き2ページくらい、原稿用紙2枚強に対し、こちらは4ページー5ページ、原稿用紙で言えば5枚におよぶ。これだけの長さになると一つの考えや経験を披露し、読者に納得させるものがないと持たない。そこがこちらに面白いところ、感性が若々しく安西氏の気のきいた絵とあいまって、楽しく読んだ。以下エッセイのホネのようなところをいくつか書き出してみる。
「交通ストについて」
僕は「交通スト」というのが好きである、と断じ、いつもは何かがあるところに何もないというマイナス状況・欠落状況の方が好みみたいとしている。
「ダークブルー・スーツ」
そのスーツはまだ一度しか着た事がない。あんな面倒くさいものは着ないですませることができればそれにこしたことはないと考えている。値段は高いし、動きにくいし、すぐスタイルが変わるし、クリーニング代もかかる。
「噂!」
噂はあれはあれでなかなか面白いものである。どれが本当か、どれが嘘か?「村上は厚揚げを毎日3枚食べる。」「プレイボーイ表紙にある星の数は編集局長ヘフナー氏とプレイメートのセックスの回数を表している。」「マグドナルドハンバーガーには猫肉、カンガルー肉などが使われている。」「アインシュタインの脳はウイチタの医者が瓶につめて保存している。」「ジョン・デリンジャーのペニスはあまりに大きかったのでスミソニアン博物館に保存してある。」
「セーラー服を着た鉛筆」
鉛筆はFを使っています。Fの鉛筆って、僕いつも思うんですけれど、セーラー服を着た女学生って感じがしませんか?」・・・・
「学習について」
僕が物事を教わるのが好きになったのは大学を出ていわゆる「社会人」になってからである。
「オーデイオ・スパゲテイ」
少なくともテクノロジーに関してはデモクラシーというものは完全に終結してしまっているように僕には思える。・・・・当然である。
「政治の季節」
僕は生まれてこのかた選挙の投票というものを一度もしたことがない、と開き直っている。先日旅行したオーストラリアでは罰金ものだった。彼はどう考えるだろう。
「グッド・ハウス・キーピング」
主夫の苦労がよくわかる。男が料理を作ることが苦手なのは、女房が働きに出ず、台所でがんばり、夫を入れてくれないからなのかもしれない。
「趣味の禁煙」
禁煙三か条がいい。1禁煙を始めたら3ヶ月は仕事をしない。2他人にあたる。汚い言葉をはく。どんどん嫌味をいう。3好きなだけ、好きなものを食べる。
「批評の味わい方」
作家が批評を批評したり,それに対して何らかのエクスキューズをしたりするのは筋違いだと僕は考えている。
030408