日本共産党     筆坂秀世

新潮選書

著者は1948年兵庫県生まれ、というから57歳くらいなのか。
山奥の水のみ百姓の末っ子に生まれ、地元の高校をでて、三和銀行に入行。しかし仲間から疎外されたこと、自分自身の行き方を求めたこともあって、25歳で共産党の青年組織民青の誘いに載り入党。
専従活動家として活動。国会議員秘書を経て参議院議員となり、共産党ナンバー4の政策委員長となるも不祥事を契機に議員辞職している。不祥事とは議員秘書に対するセクハラ疑惑で、「プライドをずたずたにされた。」から辞職・離党したとある。
共産党の志位書記長が「でたらめばかり書いて」と言った、と伝えられているが、大筋で見れば真実なのであろう、と確信する。

日本共産党が創立されたのは1922年で、ロシア社会主義革命の指導者レーニンによって作られたコミンテルン日本支部としての誕生であった。日本の政党の中では文句なしの一番の老舗である。
組織は、中央委員会を頂点に完全なヒエラルキーが出来上がっている。党内に真の選挙は存在しないといえる。党内序列は不透明で、不破氏の発言で物事がきまり、幹部はものをいわない。議員候補はすべて党が指名し、情報収集、資料作りなどは党に属する秘書軍団が行う。年間収入は300億円で新聞「赤旗」などの売り上げが251億円を占める。しかしこれには発行経費が180億円もかかるから、政党の中で収入トップといいながら内情は苦しい。そのため地方組織では給与遅配も珍しくない。

日本共産党の終局的な目標は社会主義・共産主義の社会を実現することである。実現は22世紀か、23世紀か。理想はともかくとして現実に目指しているのは「資本主義の枠内での民主的改革」であり、この改革を実行する政府を「民主連合政府」と命名している。そのために@日米安保条約を廃棄し、米軍基地をなくし、非同盟・中立の日本にする。A大企業の横暴を抑えて、国民の生活と権利を守る民主的なルールを確立する。B憲法改悪を許さず、民主主義が確立し、軍国主義の心配のない日本にする。
しかし現実には「赤旗」は発行部数を半減し、支部の数も減少している。衆議院・参議院の選挙についても、社会党が解党状態であった98年参議院選挙での躍進をのぞけば、後退を続けているといわざるをえない。しかし党は自画自賛とご都合主義の総括ばかりをくりかえし、指導部の責任はない、としている。

以上のような状況をベースに著者は以下のように主張する。
ソ連の崩壊を受け、共産党は1994年に「スターリン以後のソ連社会は経済的土台も社会主義とは無縁」としたが、日本国民は従来からソ連こそが社会主義国だと見てきた。それゆえ社会主義革命は時代遅れである、とみなすのが当然である。不破氏はモデルは要らぬ、というが何の青写真も示さず、今の若者に魅力的に捕らえさせる事はできまい。

また「共産党は絶対正義」という考えを棄てるべきときではないか。評論家加藤周一氏の言う「思うに、マルクスの思想は、心理の体系ではなく、真理への道程であり、本来共産党は正義ではなく、正義への道程であるべきはずのものである。」は正しい。
しかし日本共産党は、自民党、民主党、公明党の間に大きな政策的相違がなくなった現在、その存在意義は十分にあると思う。本当は後藤田正晴氏がいうように「名前を変えて、社民党と一緒になって社会主義的政策を要求する政党になればよい」のかもしれぬ。

話は分かる。共産党というもののポイントを知る上では良くかけている。しかし著者は共産党から給与を得ていた専従活動家だったわけである。彼の誘いで共産党に入党した者も多かったのだと思う。すると彼等は「今更そんなこと言ったって・・・」という気持ちにならざるを得ないか。


060530