講談社ロマンブックス
お吟様は千利休の娘で、兄が二人いたからお三さま、と呼ばれていた。この作品は、河内からでて、そのお吟様に朝夕かしづき、お給仕やら、お召換えやら、ご入浴の介添えをやった侍女の思い出話、という形態を取っている。
あるとき、彼女に石田治部少輔を通して、萬代屋宗安との縁談話が持ち上がった。いやとはいえぬ。ところがお吟様は浮かぬ様子、お輿入れちかくなって高山右近太夫あてに封書をとどけるよう頼まれる。お吟様は右近さまを慕っていたのだ。
高山右近には妻があり、しかもキリシタン大名であったから離婚はかなわぬがお吟様の思いは変わらない。
宗安との結婚生活は味気ないものだった。そのあいだお吟様は比叡山極楽寺東陽坊などで密会を重ねる。やがて右近はキリシタン廃止令で、棄教を拒否したため追放となるが、密会は続き、やがて発覚、宗安のもとを去ることになる。
北の政所の要請で黒百合をいけたが、これが淀君との確執をうんだ。その彼女に秀吉が目をつけ、淀君がそれに乗った。英俊はお吟様を黄金の茶室に招き、迫るが右近のことしか考えがおよばぬお吟様は断ってしまう。右近を追って加賀に行こうかと思案していると、新しい茶室を作ったと秀吉からの再度の登城依頼。気がつくといつのまにか千家の周りを14,5人の武士が囲んでいた。
通俗小説風であるが、茶の湯のことなど非常に詳しく、またお吟様の一途な愛もよく描かれていて趣のある一編になっている。
・ 黄金のお茶席は二畳敷でござりまして、天井、柱みな黄金でござります。御畳表は猩々皮、畳のへりは紺地の金襴で、中は錦、裏は毛氈と聞き及びました。明かり障子の骨も黄金で、紙の変わりに赤紗が張ってござりました。壁は金箔で押してござりまするので、席の中は赤光のように輝いておりまする。
金梨地の御飾り物の金物は申すまでもない黄金でござります。黄金のきり合わせの風炉に、黄金の丸釜がかかって、松風の音を床しく立ててござりました。
・ ・・・・・・(141p)
021201