女ざかり           丸谷 才一


文芸春秋

 新日報新聞社の南弓子は、千枝を生んで1年半で夫と別れ、その後「男・四十代」で知り合った優秀な男たちと知り合いになった。社内の派閥争いの結果、文章のかけない浦野といっしょに論説委員に任命され、頭を絞ることとなった。ところが彼女の書いた産児制限、妊娠中絶とからめて単身赴任制度の欠陥を指摘した社説に、水子供養をすすめる宗教団体の頭目が怒り、官房長官に直訴した。彼は国有地の払い下げを受けて新社屋を建てようとしていた新日報に圧力をかけた。人事部長の横山をはじめ会社首脳は、彼女に適当なポストを与えて、弓子を更迭し、お茶を濁そうとした。
 文章を書き続けたかった弓子は、いろいろなつてからこの事を知り、女優のおばが昔現総理大臣田丸の知り合いであったことを利用し、直訴した結果、地位の保全に成功する。しかしこれを通して新聞社の裏表を見た彼女は、退社を決意する。
 彼女には哲学者で妻子のある豊崎という恋人がおり、密会を重ねていた。しかし別れた亭主が癌で死に掛かっていると知ると、その最後も見取ろうと考える。地位を勝ち取りながら、退社し、しかも今の恋人はそのままで別れた夫の面倒を見ようと考えるなど、非論理的で必ずしもなっとく感のある書きぶりではないが、これが現実的な人生なのかもしれない。
 丸谷才一といえば当代きっての名文章家と知っていたのでそのつもりで読んだ。最初はそうとも思わなかったけれども、読み終わるとすっきり頭に入るうまい書き方と感じる。
 読み終えて作者は(1)日ごろ自分が考えている民族感、国家感など(2)自立した新しい女性の生き方、を書きたかったのではないか、そのために記事に対する会社の圧力と言う事件を利用したのではないか、という気がした。

・交換理論というのは、経済関係を妙に濁らせる性もあって、嫌いなんです。もちろん、中元や歳暮は日本経済にとって重大ですよ。一般に贈与が盛んなせいで経済が活発になると言うのは本当です。でも、生産性という決定的なものをとかく忘れがちなんです。クロネコヤマトだけで日本経済が動くのじゃない。(131P)
・払い下げられる国有地の評価の仕方(171P)
・あんなふうに(戦争)死に別れさせた日本という国に比べれば、生き別れさせた田丸家の態度の方が・・・・上だと思う・・・。お金をくれた分だけね。(242P)
・御霊信仰・・・西郷隆盛の死後措置、明治天皇の護良親王墓、後醍醐天皇を吉野神宮に祭るも同じ(264P)
・憲法廃止論(イギリスには憲法がない)(308P)
・もののやりとり、贈与論(310P)
・オフレコ・・・記事には書かないが・・・(379P)
・現代人はロマンチックな愛を神のかわりにして祭る傾向があって、そして現代人は、偶然性を、その新しい神が現れたしるしにする(385P)
・神様の反応の仕方は、日本文化の二大特徴ですね。寛容・・・厳しく詰めない。相手の立場を出来るだけ認める。趣味性・・・美的、色好み。(408P)