新潮文庫 GREAT EXPECTATIONS 山西 英一 訳
この作品が書かれたのは1860−61年、主人公が話の発展と共に幼児から三十位まで成長するから、時代は19世紀前半、場所はテムズ川下流の村とロンドンと考えればいい。
三部に別れており、第一部は19章までで、気の強い二十も年上のお姉さんと鍛冶屋のジョー夫妻に育てられた少年ピップは、クリスマス・イブの晩、沼沢地で恐ろしい脱獄囚と出会い、脅されて彼に足枷を切るヤスリと食物を与える。金持ちの老嬢ミス・ハヴィシャムの相手をし、そこにいた美しい娘エステラと知り合う。やがてジョーから正式に鍛冶屋の徒弟教育を受けるが、謎の人物から莫大な遺産を相続することになり、ロンドンに赴く。
第二部は39章までで、後見人で腕利きの弁護士ジャガーズとつきあう一方、名前をヘンデルと換え、同宿のポケットことハーバードやベントリー等とひわのグループなる会を結成し、金を使いまくる。そしてミス・ハヴィシャムやエステラと交流があったことから、ピップは謎の人物はミス・ハヴィシャムではないかと思い始め、エステラと結婚する様に運命づけられている、と信じるようになる。ところがオーリックなる男とあらそった姉が、他界した後、問題の謎の人物が姿を現す。なんとあの脱獄囚で、名をプロヴィスと言い、ピップの叔父に当たる人だったらしい。ミス・ハヴィシャムは関係なかったのだ。
第三部は苦労をしてピップを助けていたプロヴィスが実は追われており、捕まれば死刑になりかねない身と分かる。エステラは、プロヴィスとミス・ハヴィシャムの子らしいことが判明するが、結局ベントリーと結婚してしまう。ピップは次第に財政的に追いつめられて行く。プロヴィスを外国に逃れさせようとするが、官憲と彼をねらう脱獄囚仲間コンペイソンにお待ち伏せられ、官憲に捕らえられてしまう。しかもこの時プロヴィスからの遺産相続に必要な書類が紛失、結局ピップは文無しになってしまう。「大いなる遺産」は結局期待だけで終わってしまった。やがてプロヴィスが他界し、ピップの寂しい晩年が始まろうとする。
そうしたとき、ピップは、あのミス・ハヴィシャムの過ごした荒れ果てた屋敷で、結婚生活に失敗したエステラとであう。
この作品を読んだ理由の第一は、イギリスの推理作家でこの作品に影響を受けた人物が沢山いると聞いたから。第二の理由は、最近の映画で見たが、現代風にリメイクしてあり、原作を知りたかったから。そして、読後の印象。プロットは格別と言うことは無いかも知れないが、絶えず繰り返されるユーモアあふれる文章がすばらしい。ただ、訳文が現代では少し堅すぎ、古い感じがするのが残念。
人や人の動きを表現するときに何かにたとえて書くと非常に印象がはっきりすることに気づき、子供らしい素直な疑問とその解説が読んでいて非常に楽しく思った。
・(墓石の文字)私は「上記のものの妻」というのを、わたしの父がより良き世界にのぼっていることを褒め称えた言葉だと思ったからである。(上70P)
・そういうと彼女は、まるで鷲が子羊に飛びかかるように、私に飛びかかって、私の顔を流しの木の水鉢の中に押し込み・・・・(上86P)
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