オシドリは浮気をしないのか  山岸哲

中公新書

タイトルはさもオシドリだけを対象にしたような感じだが、副題に「鳥類学への招待」とあり、幅広く書かれている。

哺乳類は、雌の体内の子宮に卵を生み出すことによって乾燥から卵を保護した。しかし鳥類は、乾燥しないように石灰質の固いからで卵をつつむ工夫をした。これにより、限りなく早産をするようになったわけだが、卵に熱を与え続ける抱卵を余儀なくされ、しかも敵からみつからぬようさまざまな工夫をこらさねばならなくなった。しかしこれにより、雌雄わけ隔てなく育児に参画できるようになった。卵の保護も抱卵も雛がかえった後の餌運びも雄がしようとおもえば出来る。そのため鳥類では父親の役割が飛躍的に大きくなった。こうして鳥類では一夫一妻の子育てが、哺乳類では逆に一夫多妻や乱婚が発達しやすくなったのである。

ところで一夫一婦制は妥協の産物?とする考え方もある。

動物の行動は自分のコピーを出来るだけ沢山つくることにむけられている。そのために雄は一夫多妻でやりまくるのがよろしい。子どもが沢山出来る。しかし雌からみると一妻多

夫がよろしい。どんどん元気な精子を導入し、えさなど運ばせて卵をうみまくる。しかし両者の考えは矛盾するから妥協の産物として一夫一妻が成立しているという。

著者はさらに言う。

「鳥の雄が雌のもとを立ち去らないのは新しい雌を獲得する機会がないから、雌が雄を捨てないのは単独になると雄は子育てをしない事がわかっているから。」

ヘルパーという鳥の存在も面白い。性成熟をしているのに、自分の繁殖を差し控えて他の鳥のために働く鳥がいるのだそうだ。

一夫一妻は、鳥類の場合一般にはあてはまるが、例外もある。

モズやオオヨシキリの研究では数パーセントから十パーセントくらいの割合で婚外受精が行われているようだ。鳥類は外性器が発達しておらず、交尾は生殖穴をすり合わせるだけで行われる。どうやら婚外受精は雄ばかりでなく雌も合意で行われているらしい。

さらにアメリカのキジオライチョウの場合、雄はレック(集団求愛場)で雌を待つが、交尾を終えた雌はそこを立ちさり、雌単独で営巣、産卵、抱卵、育雛をする。この場合雄は子育てに手を貸さぬから、交尾は特定の雄に独占されてしまうらしい。

しかし鳥類の多くでは結婚の決定権は雌にあるらしい。

雌はどうやら全体を見渡して一番いい雄を選ぶのだが、その基準はいろいろ。さえずりのレパートリーが広い(カラオケがうまい)、尾羽根が長い、羽色で選ぶ(カラーのリングを識別のためにつけたらそれで選ばれたなどもあるとか)、ダンスなどのデイスプレイがうまい、求愛給餌といって餌をくれる、なわばりの大きさで決める等々。

さて、めでたく結婚が成立し、卵が出来ると問題は子育てである。前述のように大体は夫婦、あるいは雌が主体になって育てるのだが、托卵をおこなうものがいる。カッコーはオオヨシキリ、モズ、ホオジロに、ホトトギスは主にウグイスになど行うとのこと。そしてこの際、卵擬態を行うのである。つまり預ける鳥の卵と自分の卵を似せるのだそうだ。安曇野で著者が調査したところによるとオナガの巣の80%近くがカッコーの托卵を受けていたとか。カッコーの卵はやがて孵化し、オナガの雛をたたき出して親?の愛情を独占するというから油断もすきも合ったものではない。

ところでこの鳥たちの行動、ずい分われわれに当てはまっていると思いませんか。二人で子育てしていれば夫は浮気をしない、暇だと浮気する、いい男から先に売れる、中には子を人に預けてトンズラするものもいる・・・・・。